ぴょん記

こつこつ憶える

両生類奥さん、現る

 もうじき『ディザインズ』の第3巻が出る。わたしは、同作の掲載誌のほうをチェックしていないため、第2巻の危機一髪なラストシーンからはまったくの白紙の状態で、第3巻を読むことができる。

 さて、『ディザインズ』には、HA(ヒト化動物)として、幾種類かの生き物が出てくる。かれらは、だいたい、たとえば暗いところですれ違ってもただの人間にしか見えない形態をしているので、その感情が、何かを知りたい、誰かを凌駕したい、漠然と目の前のものに恋情を抱く、といった複雑なものでも、少なくとも絵面のうえではまったくおかしくはない。

 ものがたりの中心的登場人物であるクーベルチュールは、カエルをヒト化した生き物で、まず、短編集『ウムベルト』でその幼い日の才能を披露した。彼女は、おおよそ人間の美少女に見えるけれど、その驚異の跳躍力を支える足、とくに踝から先の筋肉は、さすがにカエルらしい。

 クーベルチュールを取り巻く男たちのうち、科学者のオクダ、研究所を経営する企業の創業者一族の五男坊ショーンは、それぞれ優秀だし目端も利くが、なにかが過剰、若しくはなにかが致命的に欠けている。ヒト化されたイルカのランくんはどうかというと、この子には漏れなく仲間の意地悪美少女(しかし、イルカ。)がついてくる。

 戦闘に明け暮れる、クーベルチュールの日常はあまりに苛酷。わたしは、同じ両生類でも美麗でなくてヒトの目には不格好でもかまわないから、川上弘美『みずうみ』に出てくる、「15の8」のように、同族も縁族も知らない種族も傷つけない、無防備すぎる両生類(両生類っぽいのだが、現生人類と99.8パーセントはDNAが一致するというから、ほんとうは、ほ乳類なのだろう。)の奥さんのようでありたい。 

ディザインズ(3) (アフタヌーンKC)

ディザインズ(3) (アフタヌーンKC)

 

 

 

大きな鳥にさらわれないよう

大きな鳥にさらわれないよう

 

 

寝る環境を考える

 ゆうべは、地上波でジブリの映画を流していたけれど、いろいろ体力に不安があったので、ほぼ9時半には寝た。すると、日付かわったころに、このあたりでは震度4の地震である。起きて、ヨーグルトの中パックとオランジーナという炭酸飲料を摂り、内山理名主演の「マチ工場のオンナ」の後半の再放送を観ていた。

 いま、ベッドの上に敷き布団を置いて、その上に化繊のベッドスプレッドを付けて寝ている。年末までは、敷き布団の上は、羊毛の毛布で、適度に通気性もあったが、化繊スプレッドに替えてからは、まるで電子レンジの中で低出力で加熱される餅のように、じりじりと温められて、夜中に眼が覚めることがしばしば。そして、異様に喉が渇く。

 目下、わたしは、上気道炎を起こしていることだけは確かなので、いつものように涼しい環境で眠ることは家族にいい顔をされないだろう。でも、温かすぎるのも考えものであると思わないでもない。

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餅再掲

 

寝たなり、幕末

 NHK大河ドラマの番組宣伝を兼ねて、NHKの総合もBSプレミアも総じて鹿児島、島津さん、西郷どんのオンパレードである。

 一方、正月早々妙な潜熱を伴った風邪を引いて、いねがちになっているところに、会田薫の幕末長州もの2冊である。

 

疼く春 (ITANコミックス)

疼く春 (ITANコミックス)

 

 

 

太陽を堕とした男 (ITANコミックス)

太陽を堕とした男 (ITANコミックス)

 

 馬関を脱出した高杉晋作と、京都に逃れた赤禰武人のそれぞれの「その後」についての漫画だ。女性用コミックではあるのだけど、画風があの時代のひりつくような匂いを存分にまとっていて、何度も読み直してしまう。

 

 「盗賊に襲われた商人夫婦、妻のほうが帯を解こうとしたところ、お前ではなく夫のほうだと指定されて、盗賊も下帯を露わにするというシーンを夢に見ながらうたた寝をする豪商の令嬢風の女に餌をねだる、猫」という浮世絵が新春早々ネットでは話題である。喜多川歌麿「見るが徳 栄華の一睡」のことで、絵はがきをどこか出せばいいのに。

 

親から預かった弟子を守るということ

 

相撲協会:「貴乃花親方は礼を失した」臨時評議員会 - 毎日新聞

尊属殺のケースでどういうことを娘にした父親が殺害されたかを考える知性をもつに至った人類が、上司かつ先輩なのに再三にわたる架電に応じて貰えない理事長の行いについて何ら顧慮することなくこんな処分をするとは

2018/01/05 08:01

  去年の半ばに『花戦さ』という、初代池坊専好の映画を見た。きのうの評議員会の議長は、その流れを汲む人らしい。

 さて、会見では、「上司で先輩の理事長が何遍電話しても出なかったし折り返し架け直しもしなかった。」ことに代表される礼を失した振る舞いが、貴乃花親方の2段階降格処分の主たる理由とされたが、普通の判断力のある一般人ならば、貴乃花親方は理事長からの電話にどうして応じなかったのか、そして、鏡山親方が何回か江東区の部屋を訪れたのにもどうして対応しなかったのかを考えるはずである。

 かわいい弟子の貴ノ岩が、格上の横綱力士に殴られた。もし、貴ノ岩の親方としての立場よりも、巡業部長としての役目を優先していたならば、はたして殴ったほうの日馬富士は、引退して、罰金50万円の略式命令という刑事処分を受けるところまでいっただろうか。国中から、その頑なな態度はわけわかんないし、ノーコメントを通すとはいかにも柔軟性に欠けると叩かれながらも、貴ノ岩をカメラの砲列(という表現もどうなのかとは思うけれども)から庇い続けた貴乃花親方は、もうちょっと評価されてもいいように思う。

 もし、理事長からの電話に出ていたら、きっと貴ノ岩もいろんなところに単独で引きずり出されて、お話自体、なし崩しに、モンゴル人力士同士のお酒に酔った上でのじゃれあいのように矮小化されてしまったことだろう。

 一般の人のコメントで、「喧嘩両成敗」というものがあって、とても驚いた。いったい誰と誰の喧嘩というのですか。

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タリーズのホットドッグ

 

風邪引き正月

 元旦あたりから時折ぶるっと寒気を感じていたのだけど、三日の午後に至って本格的な悪寒と間歇的な関節の痛みが一緒にやってきた。分厚く大きいタートルネックを着て布団に潜り込むけれども容易には温かくならない。そこへたいてい体温の高い人が入ってきてしばらくすると寒くて堪らない状態は脱した。非コードDNAのことなど話して、「せやからわたしたちそれほどかしこいというわけでもないねん。」と言うと、「その『わたしたち』ちうのは、いったい誰のことや。」と突っ返された。ええやん、この先、わたしは自分のこと両生類っぽいって認めて生きていくつもりやから、たまにつきおうてくれても。

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病院の食堂で苺を食べるの、好き

 

うさぎの年越し

 大晦日の午後から、山田の一家と一緒に有馬温泉の旅館で過ごしたから、元旦の昼過ぎにおうちに戻ったときはなんとなく抜き足差し足するような気分だった。ぼく、それだけ殊勝な心持ちでおったのに、帰って玄関がらりと開けた瞬間に、おかあちゃんがぼくの襟首を掴んで、ああもうこの子は冷えてからに、あら山田さんとこの皆さんもうお帰りにならはったの、という。おかあちゃんは、根っからの京都の人と違う。いや、関西生まれですらないけど、そこそこ京都のことばに近いものは喋る。でもあくまで遠慮がちにだ。山田のおかあちゃんや田中のおかあちゃんのような京都市内の、しかもいわゆる田の中で育ったおなごの、静かなんやけど逆らいがたい威厳のある話しぶりではないんや。まったくちがう。まあおかあちゃんの長い人生ではさぞかしいろんなことがあったんやろし、そういうひとつひとつがおかあちゃんの素になったりならんかったりしてるなとは思うけど、そこはつつかんほうがええのやろ。「おかあちゃん、これ、有馬温泉のサイダー。よう冷やしておとうちゃんにもあげてえ。」と、ぼくは3本だけ買うてきたサイダーを差し出した。手ぇ洗うてうがいして座敷に顔を出したら、おとうちゃんとウサギ3羽と、二条城のハムちゃんがおこたに入っていた。このウサギ3羽については、外交上の機密に属するから名前書くのは堪忍してな。さて、ハムちゃんはおるけど、ネコちゃんはおらん。これは、去年の秋から京都市動物園に日中だけ出勤するようになったネコちゃんが正月開園のよそのパークにアルバイトに出ているからや。鴨川のほとりで拾うてきたときは痩せた小さいネコやったけど、去年の夏頃からぐんと大きなりよって、京大の農学部の先生が遺伝子検査してみたら、ほんまのところ、ユキヒョウやて。まあ、なんでもいいけど、そうなると餌代がえらいかかるようになるのは目に見えているので、それは自分でお稼ぎゆうことで朝のうちにバスに乗って動物園に出勤しよる。えらいもんや。「みなさん、おめでとうさん。今年もよろしゅう。」ぼくはおこたに入っているみんなとおかあちゃんに頭を下げてみんなもおかえりとかおめでとうさんとかいろいろ挨拶してくれた。ウサギ3羽のうち、WさんがしょげているのをAさんとGさんが垂れた長い耳で交互に軽く撫でて慰めているけど、さすがにWさんなんか痛そうや。「ほら、ぼんにもお年玉や。」と、おとうちゃんがポチ袋を呉れた。500円玉が入っていた。おおきにと、ぼくは頭を下げて、おかあちゃんが出してくれた野菜ばかりのお雑煮に箸をつけた。

 のどかな正月やけど、もうじきセンター試験やで。

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上野のパンダちゃんの公開記念やて。

 

ミニマム迎春

 大晦日に凡そ20食分の雑煮、元日午前に同15食分の筑前煮が調製された。餅は実家から白いのと蓬のとが山葵由来の防かび剤の詰まった容器で届いた。わたしは合間にめしを炊いて、それを酢めしにして、札幌の佐藤水産から届いたルイベだの三宝漬だのを載せる。

 大晦日と元旦と、川上弘美『大きな鳥にさらわれないよう』を2回通しで読んだ。いくつものカタストロフとインパクトをくぐり抜けて人類が全滅するまでの何千年かの間の物語で、その静かな語りの中には、具体的な災厄の説明は殆ど出てこない。ところで、自分ではない異物を住まわせるのに、首から上ではなく、腸とか生殖器とか、とにかく胃から下というのは、わりと理に適っている。それらは、身体を職住近接の、たとえば家族経営の旅館に見立てると、家族や使用人の住まう家内ではなく、来ては出て行く者の滞在する客座敷に相当するからだ。

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星の金貨」という名の林檎