ぴょん記

こつこつ憶える

『大地』

今週のお題「読書の夏」

 

大地 (1) (新潮文庫)

 

  高校2年の夏と、24歳の夏に読んだ、パール・バックの『大地』。努力家だが、貧苦に喘ぐ毎日を送る小作農が、地主の家から頑丈さが取柄の女を妻に迎える。その後、ふとしたことから土地を買う元手を掴んだ小作農は、地道に自分の農地を広げ、やがて、その地方では有数の旦那衆のひとりとなる。

 

  男を控えめに陰で支えて子らを育てて舅を看取った妻は、妾を迎えた夫を脇目で眺めつつ、なお静かに日を送る。ところが、その内面は、醜いからと客人の前に出るなと躾けられた婢のころの屈辱、ひとりの男の正妻として添い遂げた誇り、妾やその使用人に対する蔑みなど、強い感情が燃え盛っていた。

 

 さて。生きることへの絶対的肯定が、このたったひとりの貧農から始まる一族の歴史には流れている。人間は、ある日、とてつもない重荷を背負わされ、大きな悲しみにうちひしがれ、居場所を根こそぎ奪われる。それでもその日、次の日、またその次の日、生きていなければあとはない。消えてなくなるだけだ、永遠に。

 

 それは王族であっても草莽であっても同じこと。土に生きた初代の後、一族はだんだん町の暮らしに馴染み、理屈だけは達者になっていくけれど、だからといって人生の先に待ち受ける試練が軽いものになるわけではない。国全体が、世界の帝国主義の潮流に巻き込まれ、上へ下への大騒動になっているときに、安穏とした田園生活が永遠に続くわけはない。

 

 それでも生きていくことは、至上命題なのだ。