ぴょん記

こつこつ憶える

わたしはあなたを放ちます

 「どうぞご放念ください。」と、たまに遣う。文字通り、『気にしないで』という意味のときもあれば、相手があることについて重ねて謝罪するものだからもうその種のプレイはここらでやめときましょうや、という合図のときもある。念慮するものごとのうちから、なにごとかを解き放ち、その分の心の領域をきれいにする……実際には、すべて忘れることなど彼我ともにできやしないのだが、一応の区切りとして、なにかされたほうが赦しを宣するのだ。/昨日の午前中、机に向かって作業をしていたとき、ふと、『もうご放念申し上げろよ。』と、自分に対して念じていた。4月はじまりのほぼ日手帳を、オリジナルとWEEKSの両方で切り替える準備をしていたときのことだ。ほとんど大好きで、とても心配で、だけどわたしに悪者になりきる勇気がないために、なにも告げられずにいる相手のことだ。なぜなにもいえないのか。なんとなれば、わたしなど、日本の一般の個別的経済主体としては、歴とした債務超過の典型的失敗例で、カネの話を離れた、いわゆる人間としてのかたちとしても、およそ円満さを欠いた、かなりシビアなものの見方しか持ち合わせていないものだから。ゆえに、その相手に、いまのところ有益なことはひとつもしてあげられそうにない。わずかにややましなのは、これこれすること/しないことがその相手にとって大切なこと!と思い込んでがぶり寄る蛮勇すらわたしは欠いていることだ。/ちいさな頭で、そういうことをここ数ヶ月ずっとぐるぐる考えてきた。やはり、なにかひとつだって、役に立ちそうなことを渡してあげられそうにはない。だから、忘れようと思う。ほんとうにはけっして忘れられやしないけど。

 

 新幹線が新函館北斗まで延伸して営業開始した日に。