ぴょん記

こつこつ憶える

ほろりとする感じ

 ネット上でのみ知っているあるウサギさんは、普段はおとなしくて、むしろどこか威厳を感じさせる面差しをしている。ところが、ある日、飼い主さんがアップしていた彼の動画の中では形相が一変していた。どうやらかなり立腹することがあったようで、ひどく昂奮して、もし彼の体毛が濃くなかったら、きっとその下の皮膚が怒りのあまり、紅潮しているのが見て取れたことだろう。唸り声を上げながら、前脚の下に敷いていたボール紙を噛み、後ろ脚を踏みならし、彼は、普段は礼儀正しく接する飼い主さんの向けたiPhoneにすら時折鋭い威嚇の声を浴びせた。

 

 なんて勇ましい。惚れてしまいそうになりながら、それでもわたしはなけなしの理性でこちら側に自分を引き戻す。こんな小さなバニーさんに、いったいどんな刺戟を加えたなら、ここまで逆上させることができるというの。全存在を賭けて、こんなに激しく抗議しているのに、一瞬とはいえ、わたしは、恰好いいなんて無責任にも感じてしまった。

 

 その後、そのウサギさんがあらぶっていた理由も、それがもちろん飼い主さんたちの故意や過失によるものではないことも理解した。それでも、俺の身体も行動も感情も、ぜんぶ俺のものだ!という彼の自明の主張は、何日もわたしをしんみりさせるには十分だった。

 

 

Cat Shit One 通常版

Cat Shit One 通常版

 

 

 「通常版」ではないほうは、「流血版」とは。