ぴょん記

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 新潮クレスト・ブックスという海外文学のレーベルには、およそここ30年の間に諸国で刊行され、読み継がれてきた文学作品が読みやすい日本語に整えられて並んでいる。ある小説のもつ雰囲気をまったく変えることなく、それを他言語に置き換えるのが非常に難しい所業であることに思いを致せば、目の前の一冊が親切な翻訳であるならばその事実に十分満足して、謙虚な気持ちで作品に向き合うのがよろしかろうと思う。

 

夏の嘘 (新潮クレスト・ブックス)

夏の嘘 (新潮クレスト・ブックス)

 

 

ソーネチカ (新潮クレスト・ブックス)

ソーネチカ (新潮クレスト・ブックス)

 

  シュリンクは、映画『愛を読むひと』の原作である『朗読者』の作者である。『夏の嘘』も、わかりやすくて、しかも、なんとなく読後に後ろめたさが感じられる佳作である。もとは法律の方面の人。

 リュミドラ・ウリツカヤの『ソーネチカ』では、詩的なロシアの自然と、苛酷なソ連の政治状況、夫婦として長くともにいる男女の色も欲も綯い交ぜになった情愛が静かに描かれる。若いひとにも若くないひとにも読んでほしい。

 むかし、夜に90分で1コマの授業をすることをなりわいとしていたとき、終わりに5分ぐらい余ってしかもわたしの気が向いたらおはなしをしますよ、と云っていた。朝から小学校に通って、45分×6コマの授業を受けて帰宅したあと、塾にくる5年生6年生は、とても疲れてしかも退屈していたので、なんとかその5分間が生じるよう、とても協力的に振る舞ってくれた。その「おはなし」で、たとえば平安朝の姫君を結婚だか一時の戯れだかとにかく手に入れようと思う公達は、まずその姫君付きの女房や乳母子を口説いて、ときには恋愛関係を一旦築いて、そののちに本丸であるお姫様を攻略するわけですが、そのとき、姫に至る通過地点として公達にあいしてるよと囁かれた女達は、なんとどうぞしてこの殿とわが姫との恋愛が成就しますようにと協力するわけですね、などと話すと、みんな息を詰めて、さっきまで眠くて眠くてたまらなかったことなど忘れてご傾聴くださいましてまことにありがとうございました。

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イトーヨーカドーの「スイーツキング」の蜜柑。)