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ぴょん記

まじめにはたらく

身分証のはなし

 以前、ある大学病院に長期入院していたとき、わたしは2人部屋にいた。午前にわたしが下の階に検査にいって、ちょうど同室の人も出払っているときに部屋に戻ると、その2人部屋から、病院施設の清掃を受託している会社の事務と、研修中の職員、と自らを名乗る2人の女が出てきた(「事務です。」「研修中です。」といって姓名は口にしない。)。院内ルールで、医療スタッフもその他の職員も常時IDを携帯する約束になっていたが、その清掃受託会社の2人の女は名札も入構証も身に帯びてはいなかった。それどころか入院患者が両方いない扉の閉まっていた2人部屋から出てきて、特に研修中の職員と称するほうはこちらを無遠慮に上から下まで眺めてはにやにやしている。ただし、この「にやにや」とわたしが感じる、明らかに厭な方向の笑みは、本人にとっては「にこにこ」と朗らかにしているだけかもしれないので当てにならない。ともかく、その清掃受託会社のスタッフらは、「制服のポロシャツが伸びるから。」という理由で、名札やIDをふだん外部から見えるところにはつけていないことが多かった。

 「なんのためにこの部屋に入っていたのですか。」と、わたしは事務と自己紹介したほうに尋ねた。「いや、別に。」と、今度は事務の人のほうまで「にやにや」しはじめた。病室は、ふつうのアパートより、ホテルの部屋より、より公共的なもので、医療スタッフや清掃の人、配膳の人が頻繁に出入りすることくらい、わたしも弁えている。でも、私物を幾つも置いていて、自分の寝床でもある場所に、初対面の名も分からない清掃会社の人が「別に」用もないのに立ち入るのは、不快というよりも不気味だった。数日後、なにかのついでに清掃スタッフに名札表示の徹底をはかってほしいと病棟師長に申し入れた。制服のポロシャツが伸びる、などと清掃スタッフはまたぞろ繰り返したようだが、はっきりいって、それは屁理屈だ。

 きのう、こういうことがあった。

 最初に『東京都水道局です。』と名乗ったのは、水道局から調査を委託された業者のスタッフの人だった。「下の事務所に許可もらってます。なんなら水道局に確認してもらってもいいっすよ。」と彼はいったけれど、水道局に電話を掛けたのが10時半、回答の電話をいただいたのが13時半だった。「車に忘れてきた」という身分証を携帯していてわたしに5秒間みせてくれていたら、電話代も待つ時間もかからなかったのだけど、ドアを開けざま、こちらの都合も聞かず、計量カップを突き出し、これに水道の水を1杯とってください、と、その場の勢いで受託した調査をこなそうとするお人にゃあ、いってもはじまらないのかな。

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