ぴょん記

こつこつ憶える

『あなたのことはそれほど』

 以下の文章は、漫画の感想文。テレビドラマのほうは観ていない。漫画『あなたのことはそれほど』は、雑誌掲載中に真ん中くらいから飛び飛びに読み始めて、先月から今月にかけてKindleで1巻から5巻まで読んだ。6巻が最終巻ということだけど、こちらはまだKindle化されていないので、作品全体は読み終えていない。

 主要登場人物は、4名。涼太と美都が渡辺夫妻で、光軌と麗華が有島夫妻だ。美都と光軌が、小学校と中学校の同窓生、光軌と麗香は高校の同級生。涼太は、同学年の彼らよりも5才程度年上。物語は、麗香が第一子を里帰り出産している間に、美都と光軌が再会し、ホテルの一室で性的な関係をもつところから始まる。美都も光軌もお互いに結婚していること、また、光軌については、子供が生まれたばかりであることをあっさりと打ち明け合う。そして、美都の夫、涼太は、妻の婚外恋愛に衝撃を受けるが、誕生日と結婚記念日の贈り物として、「なにがあっても妻を愛し続けること」を誓う。一方、光軌の妻、麗華は、別々に自分に接触してくる美都と涼太の存在、また、「いかにも」な光軌の挙動から、自分たち夫婦の間に生じた亀裂の深さを感じ取り、それでも賢明に身を処そうと努める。……4人が4人とも、30才超えた大人としては相応の、小暗い森を心の中に抱えている。それは成熟とはいえないまでもそれぞれ固有の個性といえるだろう。小学生のときから一番好きだったからという理由で、約20年の時を隔ててもなおもまっすぐにすべて薙ぎ倒して光軌にぶつかっていく美都、彼女は、その夫に劣らず、とても「変な」女なのだが、涼太や光軌のような彼女を愛する男らに比べると、欲望がストレートに表出されている分、むしろ把握しやすい。ひきかえ、麗華は、自分の権利、欲求、縄張りというものを主張しすぎず、つねに嫌味にならない程度に利口に振る舞う。それにもかかわらず、彼女を頼ってきた近所の若い主婦や、あろうことかずっと支えてきた母親にすら、その「正しさ」を軽く指弾される。これはいかにもやりきれない。ともかく、美都と麗華は、これほど異なっているのに、根のところで、いわば『だったらほかにいったいどうしろと?』と居直る勁さを通有している。ゆえに、彼女たちは憎しみを外へ向けたりはしない。ある程度の傷を負いながらも自分の内側を眺めることで、次に進むべき先を知ることができる。なお、作中、美都の友人、香子の存在は重要である。香子と街で行き会った光軌が彼女に向けたことばにこそ、光軌の真意が込められている。