ぴょん記

こつこつ憶える

きのう割れたカップ

 朝、シンクに夜の間に使ったカップを置いたところ、「かしゃん」という軽い音がして、縞の模様のカップが割れた。これは、なにかとむちゃくちゃなことが起こった2回目の長期入院のときに使い始めた品だなあと一瞬の感慨に耽ったあと、軽く濯いで袋に詰めて廃棄箱へ。これは2回目の長期入院に限らないことだけど、薬で免疫力を抑え付けている状態のとき、風邪をはじめとする感染症にかかった患者やその家族たちが足繁く出入りする病棟に留め置かれるのがどうにもこうにも不安で、不快で、不都合だった。

 3回の長期入院のあと、何回か2泊や3泊の短期入院を繰り返した。さらに免疫力を抑えるためにより強い薬を身体に入れたり、眼球を詰め替えられたり縫い直されたり。退院の予定日がわかっているそうした入院でも、少なくともわくわくして病室で荷ほどきをすることはない。たいていは入院ぎりぎりまで仕事と家の用事をこなしているので、軽い服に着替えたあとはぐうぐう寝て過ごす。ベッドのそばにテレビはあるけど、もともと観ないので。

 ともかく、4年前に手に入れたカップが1個割れた。そして、わたし本人は、まだ生きている。

 

  ヤマシタトモコさんの旧作は、これでいちおう読み通したことになるのかもしれない。人間が剥き出しにされて、必ずしも好意的ではない無数の視線を浴びている、そんなひりつくような寂しさを初期の作品には感じる。