ぴょん記

きょうからしばらく雨降る日々

ふた昔前の食生活は

 食物繊維が豊富で、高蛋白、低脂肪であるために、和食は、日本が世界に誇るひとつの文化であるといわれる。ただし、庶民の食生活、とくに前の戦争に敗れてすぐのころまでの貧乏な家庭の食事は、なんとか今日のいのちを繋いで翌日の苛酷な労働に堪える体力を養うことに主眼が置かれていたので、カロリー摂取は炭水化物優位で、汗も掻くし保存手段も限られていたから、味噌も漬物も塩分過多であったという。鶏卵や鶏肉が高級品で、干した魚もなかなか行き渡らない山奥の村では、猪や鹿がたまのご馳走で、刺身などは年に何回も口に入らなかったようだ。その傾向は、ふた昔、つまり、20年前か30年前ぐらいまでは残っており、たとえば、うどんを夕食にする際も、どうかすると、お膳には盛り切りの麦飯が載っていたりした。糖質コントロールをするかどうか以前に、屋外での労働が多くて労作度が高いものだから、それだけ炭水化物を摂取しても血糖値も上がらねば、肥えもしないのだ。

 わたしは、そういう田舎で育って、徐々に大きな町に移っていった。新しいところにいくと、必ずといっていいほど、それまでいた場所のことを僻地であるといって貶められた。そうされる理由をまず自分のうちに、つぎにその、それまでいた場所に探してみたが、いつも答えは出なかった。もといた場所が田舎であるのは確かなことだし、そこを田舎であるとばかにする連中と自分がいる場所だって田舎でないわけではないので、まあいいやと様子をみているうちに、また次の場所へと旅立つ時期がやってきた。

 東京にきて、出身地を尋ねられ答えると、「九州出身の女の人は、お酒が強いんだってね。」と言われることがあった。これは、これまでの人生で、累計で軽く300回くらいは言われただろう。この命題の真偽は定かではない。わたし自身は、純粋アルコールで40ml以上は、飲まない。5パーセントのビールならば800ml、15パーセントの日本酒なら270mlだから、1合5勺くらいだ。出身地を田舎と貶される代わりに、「お酒が飲める」というフレーズが持ち出されるようになった。これはと、わたしは考えた。田舎とか酒飲みとか、これは単に、「わたしはお前の出身地について何らかの知識がある」という意味のただの挨拶、あるいは挨拶代わりのジャブにすぎないのではないか、と。

 でも、田舎者扱いは論外としても、美人が多いとか空気がおいしいとかじゃなくて、九州ぐるっと一纏めにして、「女は酒が強い」は、さすがに大雑把ではないか。

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大分県中津市のからあげなんだって。