ぴょん記

きょうからしばらく雨降る日々

『サターンリターン』2巻

 直接の面識のない者も含めて、とにかく同性からその危うさを警戒される加治という名の作家。彼女が、5年前に文学賞を受けて以来、新作を発表することなく過ごしてきた日々の軌跡が明らかにされる第2巻が先日リリースされた。

 彼女の夫との婚前のつきあい、そして、いまは東京で暮らす彼女と離れて暮らしていた大阪在住の友人「アオイ」の生業、彼を取り巻いていた女たち、男たち。かなり軽はずみではあるけれども、行動力だけは抜群に高い編集者が加治を引っ張っていったり、逆に彼女に振り回されたりしながら、「アオイ」の過去が明るみに出される。「アオイ」の像が、『マンダリン・ジプシーキャットの籠城』に出てきたはかなげでしたたかな娼夫のようにふわっとしていて、彼と加治とを結びつけていた絆さえ、加治の妄念のなかにだけ存在していたのではないかとさえ思える。が、それは実際にあったのだ。そうでなければ、「アオイ」は30歳を超えても生きていられた筈である。

 なお、加治は、ファム・ファタルというには余りに隙だらけのおねえちゃんに、一見、みえる。