ぴょん記

きょうからしばらく雨降る日々

『マザーレス・ブルックリン』

 まず、1都3県の緊急事態宣言が発出されたので、特に用事のない者は、家で大人しくしているに限る週末である。加えて、この寒波で、雪の降らない東京でも、うすら寒いのを通り越して、つめたい空気がかたまりで上から押してくるのが、部屋にいてもわかるほどだ。

 だから、映画をみた。孤児院から自分たちをもらい受けて一人前に育ててくれた親分のような探偵が殺されて、その死の真相を探る、チック症をかかえた調査員。1960年代のはじめなのか、ニューヨーク市の再開発計画を巡って、不当な追い出しと汚職と、都市開発の夢が、貧しい人々を押し潰す。黒人、ヒスパニック、ユダヤ系にそのほかの少数民族、住む場所を奪われ、馴染んだコミュニティを壊され、寄る辺もなく苦しんでいた。それをなんとかしようとする、ロースクール出の若い女性と、前出の調査員。今度は、その女性の父親が殺されてしまう。

 はっきりした解決が示された映画ではない。それは、翌日に観た、2004年の『レディ・ジョーカー』も同じことだった。出自の絡む話に、過去を清算して恨みをきれいに晴らす、そんな片付け方など、ない。