清涼殿の西庇にお上がお食事を召し上がる部屋があって、そこを朝餉の間と呼ぶそうです。「朝カレー」と聞くと、あさがれひと掛けているのかしらしかしまさかそこまではと、少しだけ古文好き脳がちりちりと炙られるような心地がします*1。
さて、常体に戻して。このごろは、寄る年波で、炭水化物、蛋白質、脂肪の三大栄養素を消化しづらくなり、カレーを拵えても、自分の分は、ごはんが80gに、カレーは中ぐらいのレードルひとすくいぐらいで、夜食べたら翌朝以降はもう食べないようになった。これでも数年前までは、ココイチのごはん300gでルーはビーフの7辛、ついでにカツの1つも載せたのをぺろりと平らげていた日もあったのに、ねえ。
『ごちそうさん』という朝の連続テレビ小説がかつてありました。レシピブックも上下巻で出ていて、たしか下巻のトップが牛すじカレー。ある解説によれば、作中では、カレーが官能的な関係の隠喩として用いられていて、中年に至ってかつての幼なじみの女医のところにふらりと漂っていきそうになった夫のこころをぐいと自分のほうに引き戻した妻の得意は、そのよく煮込んだ牛すじカレーということだった。主人公の夫妻を演じたふたりがのちに結婚して、そしてお別れしてしまったことは残念だけど、それでもなお、あの作品が名作であったことは揺るぎない事実だと思う。
そう、カレーのスパイスの香りは、鼻から舌から、ときに目からわれわれの身体に入っては、嗅覚、味覚ほかの感覚を揺るがせる。おいしいことはおいしいし、食べられれば朝から食べたっていい。ただし、食べてすぐに会社に出る前に、せめてコーヒーの一杯もなければ、いくらなんでもモードの切換えが出来かねるという人もいるかもしれない。カレーは、ラーメン同様、深く「私」と結び付いた食べもの、それも家族や恋人、友人とは離れた「個」の領域に据えられるべき存在なので、お昼ならともかく、朝は、残念ながら飛ぶようには売れないだろう。
だから、小さなコーヒーかオレンジジュースのカップやグラスを付けてみればどうかしら、と思う。
朝食 パン、ヨーグルト、コーヒー
昼食 なし
夕食 炒飯の残り、豚汁の残り、牛肉、じゃがいも、きゅうり
夜中に、カップ麺。