ぴょん記

きょうからしばらく雨降る日々

鰯寿司、鯖寿司

 わたしは、海から遠く隔たった山間で育った。現在ほどコールドチェーンが発達していない時代、畜肉はともかく新鮮な魚介を味わう機会など日常に殆どない。ところで、年に数回、「おつきあい」で氷詰めの鰯を購うことがあった。朝のうちに比較的近くの海で獲られた鰯は、昼下がりに発泡スチロールのハコのなかで氷に溺れるようになって家に着く。それを母親が三枚に下ろす。作業は黙々と進められる。小骨も見える範囲で抜かれる。そうして掃除した鰯の身を酢水で洗っては、甘めの漬け酢に沈める。酢飯のほうは酢がきつめで、青い紫蘇や山椒の葉をあしらいながら、握り鮨の上に次々と酢締めの鰯が載せられていく。

 いまでは考えられないが、当時のわたしは、この鰯の鮨が少々怖くて、ふたつみっつ食べては、おいしゅうございました、と箸を置いていた。この鰯の鮨と、父方の祖母のぼたもちについては、もっと食べておけばよかったという気がしないでもない。

 鯖は、酢締めにしてもなお鉤虫等が生きていることがあるときいたが、プロの手になる鯖寿司となると、たぶんそのような不手際は起こらないだろう。京都に行くと、一本3000円ぐらいしたり、それが半分にわけられたりしたのをしばしば買う。スーパーで地元の醤油を買って、ホテルでお茶を淹れて鯖寿司を食べる。ある老舗の鯖寿司の酢飯は、酢と砂糖と水飴で粳米と糯米の2種類の米を(要出典)仕上げるようだ。鯖街道を通って京都にやってきた、北陸の冷たい海を知っている身の厚い鯖を、酢締めにして、その甘い酢飯を丸く巻き込むようにして形を整える。切り口がドラえもんの顔に似ていると一瞬思ったりしながら、自分の分の2切れか4切れを大切に食べる。鯖寿司だけで完璧なので、もうお酒など飲んでいられない。

 ところで、ホテルの客室で持ち込みの鯖寿司を食べるとき、カットする果物用ナイフはあるけれども、醤油用の小皿まではふつうはないものである。だから、醤油は、ケーキなどを食べるための洋皿に垂らす。それしかないからしかたない。あとは、コーヒーカップのソーサーぐらいしか。

 

彼女がパック寿司のフタを醤油皿にしてたが育ちの悪さはフとした瞬間に出るよな

鮨のネタのほうに小さな皿に垂らした醤油を少しだけ染ませて、しゃりを含む鮨全体を崩すことなく無事に一口で食べてしまうには、テイクアウトの鮨は往々にして脆すぎる。大きめの皿やフタのほうが食鮨安定性は高い。

2021/07/12 15:04

 

 

子供の頃から、祖母に「買ってきたお惣菜等をパックのまま食卓に出しては..

自分や大切な人の食事を皿や碗を用いて調えることの大切さを教えた上で、どんな環境であっても自分も周りも不快にならない融通無碍な姿勢を教えたのだと思う。発達段階に応じた教育法で実に理に適っている。

2021/07/13 00:54

 

 

 

 朝食 パン、牛乳羹、コーヒー

 昼食 ひやむぎ、おとうふ

 夕食 カレーライス(予定)