ぴょん記

食べる、遊ぶ、学ぶ。

卒業した県立高校からの呼び出し

 あらかじめ断っておくと、これは、きょうの未明に見た夢の一部。わたしが15歳の終わりから18歳の大部分を過ごした県立高校では、選択授業が多かった。平日の午後や長期休暇の選択授業は、教諭や講師が生徒を選ぶし、生徒も内容や担当によって授業を選んだので、揉めたところは揉めたであろうが、わたしは、なんでもいいですどこでもいいですだれでもいいですという態度に終始した結果、学校の宿題以外殆どしない3年間を過ごした。

 それだけ学校の授業優先で過ごしていたにもかかわらず、卒業後数十年を経て、「単位取得未了のお知らせ」という、文言からして物騒な知らせがやってきた。つまり、体育の実技単位2単位が取れていないので、これこれの期日に高校の職員室に出頭して、所定の授業を受講したのち、試験に合格しなければ、高等学校卒業資格そのものが失効するというものだ。その高等学校卒業後に進学した学校の入学と卒業・修了について考えると、単純に親亀子亀理論でナシとするような不人情な学校はまさかあるはずがなく、永の年月が穏便に経過したことによって、高校卒業が体育実技2単位の未取得でおじゃんになった瑕疵など既に治癒したものと考えて、くれるか、心配になったので、とりあえず、指定された期日に高校へ出かけていった。

 少しだけ早く着いたので、高校時代に昼寝につかっていた職員室脇の小さな部屋にするりと入り込んだ。埃の積もったソファに腰を下ろして、そこから見えるロッカーの中が気になったので、左から二つ目のを開けてみた。すると不思議なことに、緑色の地で握りの華奢な雨傘、わたしが、渋谷の映画館でなくしたと思っていたあの雨傘が出てきた。おかしいなあ不思議だなあと首を傾げていたら、職員室から呼び出された。

 自分より遙かに若くみえる初対面の教務主任と体育教諭に、あなたの第3学年の授業出席は十分に足りていたのだけど、本気の度合いが不足していたと申し送りがありまして、それでもこれまでなかなか学校に余裕がなくて毎回再履修は見送られてきたのですが、今回、3日間だけ、人員及び施設に余裕が生じましてね、ですからご足労いただいたのですよ、という。「本気の度合いが不足していた」とは、あまりに客観性の乏しい物言いである。教育委員会に対する異議申立てと審査請求の手続と、体育教諭から提示された縄跳び3時間とでは、どちらが手軽かしらと考える間もなく、トレーニングウェアに身を包んで跳び縄もって校庭に立つ自分がみえた。……なんだ、わたし一人なの。