妻と離婚して、中学生の娘を育てている男がいる。男の職業は、沿岸の海で蟹など漁る船の主、漁師。演じるのは、古田新太。家でも学校でもひとりぼっちだった幸薄い娘は、スーパーマーケットの店長に公道を追いかけられて、逃げて、でも、逃げ切れなくて、軽自動車にはねられる。はねられて、顔を上げたところにやってきた大きな貨物用自動車の車輪に巻き込まれて、引き摺られて、亡くなってしまう。
なぜ店長は、娘を執拗に追いかけたのか。売り物のマニキュアを万引きしているのをみたので事務所で話を聞こうとしたところでした、と店長は答える。店長役は、松坂桃李。先週に観た映画では、広島の刑事、しかも悪徳警官を演じていた彼が、本作では、親から引き継いだスーパーの経営に疲れ切った青年に扮している。
店長、学校の担任や教頭、別れた妻を相手に、古田新太のいわゆる「喪の仕事」は、続く。この案件がふつうの家族の死と異なるのは、店長と父親、両方に対して世間の目は冷たく、性急に追い詰めすぎて女子中学生を死に向かわせた店長と、万引きをするような娘に育てておいて店長を一方的に責める父親という図式に落とし込もうとするテレビのワイドショーの取材は執拗に繰り返される。
軽自動車を運転していた女性や、桃李の店の正義感が強すぎるパートタイマーの寺島しのぶ(つくづく豪華な映画だと思う。)など、いろいろ見所は多い。