今週のお題「この夏のプラン」
読んだ本について、粗筋を書くのはともかく、感じるところをものすのは、紙が何枚あっても足りない。ところで、これから読みたい本については、何を述べるべきだろうか。この夏、読んでおきたい本を紹介したいと思う。
桝形商店街の出町座でコーヒーをのんだときに棚に置かれていた本(売り物)。よくも悪くも明治維新から近代日本の形成に多大な足跡を残した伊藤博文。その伊藤が暗殺されたハルビン駅頭に至るまで、当時30歳の青年・安重根が辿ってきた人生の軌跡を描いて、韓国では30万部を超えるベストセラーになったそうだ。
総理大臣経験者が遭難したテロといえば、新しいところでは2年前の奈良県西大寺駅での安倍晋三元首相の暗殺が思い出される。事件の数日後、偶々西大寺駅の反対側のロータリーにいたわたしは、じりじりと炙られるような夏の陽を受けながら、人が標的にされて生命を奪われる理不尽について考えていた。山口県出身の元首相という共通点が、伊藤さんと安倍さんにはある。宰相を務めるという希有な経験をして、それなりに強い権勢を振るい、しかし、凶弾に斃れたふたりにともに漂うのは、しらじらとした哀切な印象である。こうして、暗殺を行った者よりも亡くなった人に視線が集まりがちなのだが、あえて伊藤博文の場合ならば、暗殺者の安重根に焦点を合わせてみることにまた別の意味があるに違いない。
昨日は、広島の原爆忌で、だから読んでおきたいと思った。
これは、『夏の花』他が青空文庫に収められているので、ソラリなどのアプリで読んでみてもいいかもしれない。ソラリは、青空文庫を読むのに便利なアプリだけど、わたしはこれで谷崎潤一郎『細雪』などをちょっとした空き時間に読むようにしていて、いまは夏目漱石『三四郎』に取りかかっている。高校生のときに、同じ漱石の『行人』を憂鬱な気分に浸りながら(完全にお兄さんに同調していた。)読んだりしていたが、その前の中学で読んだ『三四郎』は、きれいに忘れていた。九州から上京する途中、名古屋でどうしても同じ宿に泊まってほしいとせがんできた見知らぬ女に、翌朝、冷淡な別れ方(『この意気地なしが!』という軽蔑の念を感じた。)をされた理由など中学のときは知るよしもなかった。
『サラゴサ手稿』以来、理解できなくてもいいから妙な話を手元に置いておきたいと思うようになった。かつては、『唐宋伝奇集』の上下巻が愛読書だった。