アトウッドの作品の邦訳が出たので、読みたい。『侍女の物語』の続編である『誓約』も増刷が決まったらしい。
上の作品が、タイトルから想像するに、国内の上の世代と下の世代の対立に取材しているのだとしたら、国境をめぐって、ある国で生きるに足る権利保障を得た人間とはなにかということを考えさせられた連続ドラマがこれだ。
感染症予防のために、国境を完全に封鎖して10年が経過した2037年のノルウェーが舞台だ。疫病をシャットアウトし、食糧自給も達成した北の桃源郷に、きょうも海から陸から難民がやってくる。それらを押し戻しつつ、他国との協働よりも地の利を生かした独立独歩を選んだノルウェーに寄せる、難民を送り出さざるを得ない国々の視線は、実に冷ややかだ。
海というものが、ある程度の災厄の道連れを防ぎ、その代わりに孤絶しがちであるという不都合をもってくるものならば、きのうツイッターで見掛けた、皇帝の下賜品を市中で銭に替えて本国に帰任する使いや留学生たちのうち、日本から派遣された者らが特に書物を数多く購って再び海を渡ろうとしたという話も頷ける。書物は、当時の市場の規模に頼っていては、いつまで待っても東方の島国まではやってきてくれないからだ。機会を捉えて仕入れては陸路を海港まで運び、時化がちな東シナ海を渡って自力で持ち帰らねばならない。そのように、海があるのは、不便は不便、しかし、地続きに力尽くで押し入られないという何よりの強みがある。
ノルウェーは、だから、もっぱらスウェーデンとの国境と北海に面した海岸線を守ることで、鎖国によって国力の回復を図れたというのが冒頭の説明で、ここからドラマが始まる。120分くらいの映画だったら、もしかしたらもっと多くの人に観てもらえたかもしれないけれど、もし、他キャリアでリリースされたらぜひ観てほしい。
「大家族犯罪」については、東アジアにおける「幇」みたいなものかなあと思ったり。受容されないニューカマーの集団が、自衛のために武装したり、貧困ゆえに犯罪に手を染めたり。そこまでが前半。それを防止するのが、教育であり職業訓練であり、つまりは、現地の水に移民を馴染ませる、いわば混淆させる根気のいる作業なのだよ、というのが後半。