ぴょん記

きょうからしばらく雨降る日々

嗜好・対価・時間

 D大学医学部附属病院を構成する建物のひとつのすぐそばに、D大学自体の門のひとつがある。その門を出てすぐの、D大学の建物の外壁には、ここで喫煙をするな、という趣旨の注意書きがある。もちろん、それとは別に、その門の内側すれすれには、健康増進法第25条の規定によりこれより内側で煙草をのむのはいかんのですよ、という掲示もある。さて、この掲示はともかく、外壁の注意書きは、大学の敷地のへりの外におけるものなので、どうにも弱い。いきおい、数時間の禁煙を余儀なくされていた通院者や付添人は、門をでてすぐにバッグの中をまさぐり、煙草の箱とライターを取り出す。そして、注意書きのすぐ近くで紫煙をたなびかせる仕儀となる。

 一般的なたばこは、さて、いま1箱20本入りで幾らくらいするのだろうか。たぶん400円と500円の間くらいか。1日1箱、煙草をのむとして、1ヶ月に……。それはけっこうな額だろうけど、かかる時間のほうが実は厄介だ。1本つけるのに3分で、1日60分。会社の喫煙室などで雑談が始まると、自分が喫煙を終えたとしても話の輪から抜け出すまでにさらに余計な時間がかかる。

 「高級サウナ」と称して、個室付特殊浴場に通うことを習慣としている人がいる。そこでの対価は、店の等級、接客嬢の種類、時間帯、そして接客時間の長さ等によって定まるのだという。個室の中で行われることについては、「自由恋愛」が建前とされていることはまあおいといて、1回に数万円を払うのだというからたいへんだ。昨日のはてなブックマークのホットエントリに上がった東洋経済のコラムでは、風俗嬢の世界で価格崩壊が起きて、派手なブランド品に身を固め、ホストクラブで豪遊するソープ嬢など激減した、とのことだったが、昼の社会がそうであるように、夜の世界にもいつの世にも格の違いというものがあり、高い店でしっかり稼いでいる女もいるのである。建前が「自由恋愛」ならば、本音のところ、個室内で行われている営みはいったいなんなのかということにはそれほど興味はない。 

 なお、この趣味には、喫煙ほど多くの時間を必要とはしない。

 

 上に書いた個室付特殊浴場に通うことを好む人(男だ。)に、「交際相手か配偶者をみつければ、1回あたり数万円を払うことはないのに。」と云う人がある。また、「ぼくは、炊事も洗濯も掃除も自分でできるので、わざわざ結婚する必要を感じないのです。」と、別の人(男だ。)が云ったそうな。これらを総合すると、ある種の人にとって、男のための配偶者である妻とは、ソープランドの個室内で行われる「自由恋愛」を体現した営為及び日常家事雑事の処理を受任する器用な女性であるようだ。そりゃずいぶんご挨拶な、とは思うけれども、他人の性や生活について、あまり強い思い入れをもってもご無礼なだけなのでひとつだけ書いておくと、プロフェッショナルの女性との「自由恋愛」180分と同じ密度で仮に1か月に20回の「夜」を過ごすとしたら、昼間の仕事に支障を来すような予感がある。いや、わたしが「あらかじめ」それを感じてどうするというのだ。

 

 それにしても、配偶者をもつほどの金と手間暇の掛かる趣味はない。男でも、そして、女でも。

 

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(チャンプルーの素とトマトケチャップだけで味付けをした簡単ナポリタン。)