ぴょん記

きょうからしばらく雨降る日々

Buch

かき餅、七草、『サラゴサ手稿』

6日の午後にふと思いついて、四色の生かき餅を1枚ずつ、餅焼き網で焼いて出してみた。東京に転居した年の冬、アルバイト先の、喫茶部をもつ和菓子店で、これを店先の台で売っておいでといわれたなまこ餅、当時は各家庭で好きな厚さにカットして焼いていたの…

中公新書のKindle版のポイントが目下多いようです

SNSで知らせて下さる親切なアカウントがあって、つらつらと眺めて、1冊、ライブラリに取り込むことにしました。 韓国併合 大韓帝国の成立から崩壊まで (中公新書) 作者:森万佑子 中央公論新社 Amazon これから読みはじめるわけですが、著者の森万佑子さんは…

平坦なつぶやきが鈍いナイフの刃と化すとき

以前読んだ物の本に、「女性同士は、男性単体、あるいは男性及び女性、社会集団から潜在的に選択の対象となり得る存在であるから、いたずらに相手の劣等感を掻き立てるようなアピールは、お馬鹿さんのすることである。」という主旨の文があった。 たとえば、…

山本周五郎『季節のない街』

この作品は青空文庫に入っているので、わたしは、iPadアプリ「ソラリ」で読んだ。きっかけは、Disney+で独占配信される、宮藤官九郎さん企画・監督・脚本で池松壮亮さん主演の連続ドラマ『季節のない街』が、舞台を「ナニから12年」が経過した仮設住宅に移し…

たまに抗ヒスタミン剤も、のむ

右手の付け根に痒みが出たのは、まさか当夜食べたばかりの〆鯖が原因なわけないけれど、とにかく数時間痒みが残留するので、やむなく頓服の抗ヒスタミン剤を1錠のんだ。このくすりのよいところは確実に効くところで、やや困ったところは眠気が30時間ほど(※…

無理が積もるのを皺寄せというのかも

纏足という習慣が、古い時代の中華圏にはあったそうだ。女児の足は正常な歩行に堪えないほど小さく、それも小さければ小さいほどよいという「審美眼」のもと、足の指が折り曲げられた状態で布をきつく巻き、足全体も成長しないように、その矯正は女児が思春…

人生の搾め滓

むかし、田辺聖子さんの『不機嫌な恋人』という、平安宮廷を舞台にした恋愛小説を読んだ。作中、「恋のてだれ」として名高い、宮中女房の小侍従が、鏡の中の自分を見て、厳しい目で観察した上で、そこそこ美しいけれども、たしか「青春の搾め滓」などと辛辣…

『かの名はポンパドール』

半月ほど前に、全4巻読了。原作が、『王妃の離婚』の佐藤賢一さんで、この人のフランス革命全史を早めに読んでおきたいと思う。 ルイ15世の治世、フランスでは、貴族及びブルジョワジーの女性は、10代半ばで結婚をして、そこからは愛人を作ろうが浮気をしよ…

『ニューヨークで考え中』第4巻

掲題の書籍は、近藤聡乃さんのコミックエッセイ。きのう、AmazonのKindleサイトをうろうろしていたら偶然、新刊を見つけた。 COVID-19による感染症が広がり始めた2020年あたりから2023年の春までの内容で、読んでいてつらくなることも多く、前の3巻とは様相…

『長い長い殺人』

もとは、宮部みゆきさんの原作で、2007年にWOWOWのドラマWで映像化されたものらしい。当時は、なんだかテレビを観ることが少なくて、NHKの大河ドラマで何が流れていたのかさえもあまりよく覚えていない。 それはともかくとして。これが劇場上映作品にカット…

砂川文次『臆病な都市』

COVID-19による感染症蔓延のはるか以前に書かれた、疫病対策をモチーフのひとつとした小説。同じ作家による『市街戦』の、重い装備品を背負ってひたすら長い距離を歩き、野宿する演習を想起させる、地道でおとなしい、お役所仕事の連続がしばらく続く。 主人…

姫野カオルコ『リアル・シンデレラ』

1950年生まれの倉島泉(くらしま・せん)という女性の半生を、肉親を含めた彼女を知る人々に何度もインタビューしていく方法で描写しましたという体裁の文学作品。同じようなスタイルは、有吉佐和子『悪女について』という、亡くなった著名な女性について数…

砂川文次『小隊』

ロシアが北海道に侵攻してきたという架空の世界で、数においても装備においても優勢であるロシア軍を最前線で迎え撃つ陸上自衛隊の3尉が、この小説の主人公だ。ロシア兵との戦闘を開始する前、3尉は通信兵を連れて、まだ避難を完了していない住民の説得に向…

図書カードを使った

バスに乗って、比較的近所のJRの駅へ。ずっと持ち出し手帳に挟んだままの図書カードをつかって、岩波文庫を3冊購入した。前夜に劉慈欣さんの短編集『円』をKindleで購入したばかりなのに。同じ劉さんの『三体』は、老後の楽しみにとっておくからまだ読まない…

『誓約』『侍女の物語』

1985年に発表された『侍女の物語』で、マーガレット・アトウッドは、度重なる自然災害や放射能汚染に見舞われた近未来のアメリカ合衆国で、クーデターを成功させた『ヤコブの息子たち』という勢力が政権を握り、ギレアデという政教一致の国家を成立させたの…

『笹の舟で海をわたる』

1955年ごろの東京、学校を卒えて洋裁店に勤めていた主人公は、学童疎開で一緒だったという娘に声を掛けられる。その娘、風美子は、主人公の生活に、そして人生に巧みに入り込み、50年の歳月が流れる。 角田光代さんの『エコノミカル・パレス』もやや長いと思…

『エコノミカル・パレス』

ちょうど今世紀に入りそうな時期の、つまり、いまを遡ること約20年前の東京で、主人公と年下の彼氏は同棲生活を送っている。主人公の年のころは、34歳。「よい大学の文学部東洋哲学科」を卒業して、ライターの仕事と飲食業のアルバイトを兼業している。彼氏…

『夜また夜の深い夜』

いまでは日本ペンクラブの会長に選出されるほどのキャリアを築き上げた桐野夏生さん。『OUT』『グロテスク』『東京島』など、わりとふつうの人生を歩んでいた女に突然訪れる破綻を描かせたら現代日本で一番か二番の作家さんといえるだろう。 特に、1997年の…

『台所太平記』

鹿児島の坊津あたりの半農半漁の村から、神戸や京都、熱海や岡山と戦時疎開を兼ねて移動を繰り返す作家と、その女系の家族に仕えるために、まだ若い身空の女中たちが続々とやってくる。働き者で料理上手、器量はとりどりだけど花も実もある年頃となれば、雇…

『一死大罪を謝す』

役所広司さんは、『孤狼の血』では警職法の向こう側を泳ぐ警察官を、『すばらしき世界』では生涯の殆どを塀の内側で過ごした元受刑者を演じた。『三度目の殺人』で扮したのも、若いころに殺人を犯し、出所後ひっそりと暮らしていたが、ある事情から再び人を…

『恋歌』

明治10年に私塾「萩の舎」を開いて、上・中流階級の子女を門弟としてその数は一時1000人を超えたという中島歌子の半生記。桜田門外の変のあと、水戸藩の内部で、天狗党と諸生党とに分かれた党争が繰り広げられ、天狗党に属する藩士の子女らが捕縛され、獄死…

『救世群』

『天冥の標』のⅡで、ものがたりの舞台は、29世紀の植民星ハーブCから21世紀の地球に変わる。描き下ろしの文庫本で10年ほど前に読んだときは、延々と陰惨な集団検疫と隔離のシーンが続いたように思われたけれども、今回、iPadで読み返したら、そういう場面は…

『福袋』

朝井まかてさんの短編集。大御所家斉の時代から、老中水野氏による天保の改革のあたりまでの江戸の庶民の哀歓を活写したもの、なのだけど。まず、最初の作品の初っぱなで、時空というか視点の置き場所が定まらずに弾みでまんまとタイムスリップさせられる。…

わたしにとっては愛しいあなた

『危険な関係』の翻案。1931年の上海、中国人の大富豪たちが夜な夜な華やかなパーティに時を過ごした時代。女は、自分を捨てた男への復讐のため、彼の若い婚約者の貞操を奪おうとある企みを練り上げる。共犯者は、彼女のかつての恋人。このものがたりには主…

拾い読み文学『三人法師』/遣唐使と虎

青空文庫で、谷崎潤一郎『三人法師』を読んだ。高野山である夜、自らの発心について偶々語ることになった、三人の僧。はじめのひとりは、足利尊氏に仕える上級武士だった。かれがあるとき貴族の屋敷で見初めた上臈女房との恋は、あるじの尊氏の後押しもあっ…

『姥捨』

太宰治の作品。青空文庫で読んだ。作家が、妻とふたり、情死するための小旅行に出る。感情の縺れ、親族らとの不和、それから、経済的な逼迫が、夫婦を追い詰めている。当座の生活費に、質屋でなけなしの衣類を差し出して借りた金を足して、ふたりは新宿に出…

『蓼喰ふ虫』

倉橋由美子『城の中の城』に、作品名と内容少々が引用されていた谷崎潤一郎『蓼喰ふ虫』を青空文庫で読んだ。今回、『細雪』のように登場人物の話しことばが関西方言だったら読むのに時間がかかるかなと思っていたが、それは、京都訛りの「お久」ぐらいのも…

『夢の浮橋』

まだ20代の半ばのころ、埋立地の古書店で倉橋由美子『夢の浮橋』の、たぶん初版本を手に入れた。『シュンポシオン』も、初版本ではないけれど、古本だった。『城の中の城』は、図書館で読んだきり、そして、『交歓』は、文庫本の新刊として手元にきた。 これ…

新しい神話におけるデスマーチ

寝る前にiPadでいろいろ読む。漫画や、太宰治などの小説、そしてSF。『三体』をそろそろ読まないととは思うのだけど、なかなか手が出ない。読めば必ず面白いことはもうわかっているのに。 小川一水の短編集で、小国の第六王子に生まれて、膂力や容姿に恵まれ…

『黒猫の三角』

ゆうべ、森博嗣さんの原作を皇なつきさんがまんがにしたものを読んだ。森博嗣さんの作品は、『スカイ・クロラ』シリーズを映画化をきっかけに一通り読んだだけで、あとは、実写映画化されたものを観たくらい。皇なつきさんは、大好きな漫画家さんのひとりで…