ぴょん記

上古文学、外国語、数学、調理、編みもの、縫いもの、競争法

Buch

『恋歌』

明治10年に私塾「萩の舎」を開いて、上・中流階級の子女を門弟としてその数は一時1000人を超えたという中島歌子の半生記。桜田門外の変のあと、水戸藩の内部で、天狗党と諸生党とに分かれた党争が繰り広げられ、天狗党に属する藩士の子女らが捕縛され、獄死…

『救世群』

『天冥の標』のⅡで、ものがたりの舞台は、29世紀の植民星ハーブCから21世紀の地球に変わる。描き下ろしの文庫本で10年ほど前に読んだときは、延々と陰惨な集団検疫と隔離のシーンが続いたように思われたけれども、今回、iPadで読み返したら、そういう場面は…

『福袋』

朝井まかてさんの短編集。大御所家斉の時代から、老中水野氏による天保の改革のあたりまでの江戸の庶民の哀歓を活写したもの、なのだけど。まず、最初の作品の初っぱなで、時空というか視点の置き場所が定まらずに弾みでまんまとタイムスリップさせられる。…

わたしにとっては愛しいあなた

『危険な関係』の翻案。1931年の上海、中国人の大富豪たちが夜な夜な華やかなパーティに時を過ごした時代。女は、自分を捨てた男への復讐のため、彼の若い婚約者の貞操を奪おうとある企みを練り上げる。共犯者は、彼女のかつての恋人。このものがたりには主…

拾い読み文学『三人法師』/遣唐使と虎

青空文庫で、谷崎潤一郎『三人法師』を読んだ。高野山である夜、自らの発心について偶々語ることになった、三人の僧。はじめのひとりは、足利尊氏に仕える上級武士だった。かれがあるとき貴族の屋敷で見初めた上臈女房との恋は、あるじの尊氏の後押しもあっ…

『姥捨』

太宰治の作品。青空文庫で読んだ。作家が、妻とふたり、情死するための小旅行に出る。感情の縺れ、親族らとの不和、それから、経済的な逼迫が、夫婦を追い詰めている。当座の生活費に、質屋でなけなしの衣類を差し出して借りた金を足して、ふたりは新宿に出…

『蓼喰ふ虫』

倉橋由美子『城の中の城』に、作品名と内容少々が引用されていた谷崎潤一郎『蓼喰ふ虫』を青空文庫で読んだ。今回、『細雪』のように登場人物の話しことばが関西方言だったら読むのに時間がかかるかなと思っていたが、それは、京都訛りの「お久」ぐらいのも…

『夢の浮橋』

まだ20代の半ばのころ、埋立地の古書店で倉橋由美子『夢の浮橋』の、たぶん初版本を手に入れた。『シュンポシオン』も、初版本ではないけれど、古本だった。『城の中の城』は、図書館で読んだきり、そして、『交歓』は、文庫本の新刊として手元にきた。 これ…

新しい神話におけるデスマーチ

寝る前にiPadでいろいろ読む。漫画や、太宰治などの小説、そしてSF。『三体』をそろそろ読まないととは思うのだけど、なかなか手が出ない。読めば必ず面白いことはもうわかっているのに。 小川一水の短編集で、小国の第六王子に生まれて、膂力や容姿に恵まれ…

『黒猫の三角』

ゆうべ、森博嗣さんの原作を皇なつきさんがまんがにしたものを読んだ。森博嗣さんの作品は、『スカイ・クロラ』シリーズを映画化をきっかけに一通り読んだだけで、あとは、実写映画化されたものを観たくらい。皇なつきさんは、大好きな漫画家さんのひとりで…

『BEASTARS』第15巻

BEASTARS(15) (少年チャンピオン・コミックス) 作者: 板垣巴留 出版社/メーカー: 秋田書店 発売日: 2019/10/08 メディア: コミック この商品を含むブログを見る 主人公のレゴシは、ハイイロオオカミだけど、母方の祖父はコモドオオトカゲのゴーシャ。この…

雨に備えて for a rainy day

明日の金曜日は、東京でも雨が降るそうな。10月に入ったとはいえ、気温は高く、きのうも夕刻まで冷房を入れて過ごした。半袖どころかノースリーブで過ごしながら、あと90日ほどで元旦だなどと思案する。遡ること90日前は7月の始めで、長引きそうな梅…

秋の夜長の漫画読み

月曜は、昼下がりにふと空腹を覚え、ココイチのデリバリーを頼んだ。119分待ちという途方もない表示が出ていたけれど、出前館の待ち時間表示は、当てにならない。案の定、しばらくして、最寄りのココイチから、「予定時刻より早い時刻の出前も可能だが、…

「この世」の風景

ランド(9) (モーニング KC) 作者: 山下和美 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2019/09/20 メディア: コミック この商品を含むブログを見る 一種の壁の内側と、その外側との関係という意味では、『進撃の巨人』とパラレルに論じることが可能かもしれない。た…

『イノサン Rouge』/WWⅡ2冊

なんの因果か、ほぼ日5年手帳にも毎日あれこれ記入している。その記録によると、昨年の今頃、『イノサン』『イノサン Rouge』をKindleで一気に読んでいる。どうもわたしは、夏になると、フランスの近世についての史伝、小説、まんがを読みたがるようである…

宮中女房に三種あり

この一週間、山本淳子先生の註と現代語訳で、興味深く『紫式部日記』を読んできたわけですが、定子や彰子が中宮であった時代、すなわち西暦1000年ごろの後宮には、私的にキサキに仕える女房として、次の三種があったようだ。 女房を職業とし、主家を渡り…

お后になるか奥様になるか

盛夏のつねとして、朝の目覚めは早く、だから昼寝をとらずにいれば宵のうちにしばらく寝入ってしまう。ゆうべも夜中頃にはたと起きて、冷やしておいた濃いめのハイボール缶を空けた。9パーセントで350ミリって、けっこうなアルコール量かも。それから、…

『血と骨』読了

済州島の常民の三男に生まれた金俊平の一代記であり、彼と関わった多くの男女のそれぞれの生の軌跡の記録でもある。金俊平は、現代の尺度でいえば、虞犯者であり現実に犯罪者であり、倫理的にはいかなる物差しをもってしても、かれは許される範囲には属しな…

ある国立高専の数学の教材

わたし自身は、公立の普通科で数研出版の教科書、参考書、問題集を学校で販売され、旺文社の問題集や増進会出版社の通信添削も解いていたけれど、なんといっても学校のプリントをノートにどんどん解いていって3年間過ごした。だから、教科書、参考書、問題…

ドサ回りに都落ち、むかし業平

はてなハイクがあったころなら、自分のIDページで気楽にレスポンスすることもできたのだけど、そこはもう消失してしまったので、自分のブログで走り書き。 『坊ちゃん』を、畑作の真ん中の都から稲作中心の田舎の平野へやってきた異邦人のものがたりとして捉…

『坊ちゃん』と道後温泉・松山

有名な一六タルトを出しているお菓子屋さんが、「坊ちゃんとおかしな仲間たち」という詰め合わせを販売している。一六タルトをスライスしたのや、別のお菓子がいろいろ入っていて、大きさと値段も幾つかある。今回、松山市を訪れるにあたって、せめて「予習…

観光地の住人の気持ち

これは、いまや世界中から観光客を受け容れて、それでもって経済の歯車を回す主要な動力としようという日本という国の民全員に関係する話だろうけども。 わたしの知人に東日本の有名な温泉町の出身者がいる。彼女が地元で中高生のころ、学校の帰りなどに酔っ…

毎月28日のお楽しみ

小学館の月刊flowersが安定して雑誌発売日当日のKindle配信をしてくれているので、うちが廃棄する古紙が月に数百グラム少なくなった。大好きな岩本ナオさんの『マロニエ王国の七人の騎士』は、この雑誌で隔月連載なのだけど、単行本が出るまでは雑誌の掲載頁…

好きなカステラ、肉饅、弁当/那須雪絵近作

はてなダイアリーのはてなブログへの発展的統合によって、長らくはてなダイアリーのライターであった id:gustav5 楠田さんが、はてなブログへ移転してこられました。 gustav5.hatenablog.com わたしのおぼろげな記憶によれば、楠田さんとは、ここ十年来、散…

読んだ漫画、観たい映画

思い立ってイレギュラーな仕事の予定を組んだので、一日の時間の進み方が十日前とはまったく違うものになってしまった。患って6年、自宅療養に移行して4年このかた、アグレッシブに働くことに取り組むのはほぼはじめてである。楽しいことは少ないけれど、…

有島武郎『カインの末裔』

再読のようだ。同じ作者の『お末の死』でも、こどもや赤ん坊が死ぬが、「カイン」でも、死ぬ。赤痢で。山本周五郎『季節のない街』では、節倹に努めた働き者の一家が、三姉妹と母親すべて数年のうちに亡くなる。結核や心臓疾患が原因だが、過労と栄養失調が…

質素な暮らしと貧民窟の明け暮れ

昨日も青空文庫で読んでいた、山本周五郎『季節のない街』は、作家が市井に取材して、都会の中の幾つかの貧しい人たちの暮らしを写し取ったものだとあとがきにあった。 山の手と下町の区別にいう下町ではなく、不安定な仕事で稼いだ比較的少額の収入で生計を…

眠くて堪らない冬の日

また薬に中ってしまったのかもしれない。もちろん、寒いのもある。おでんを炊いていた大きい鍋を空にして洗い、パンチングのザルと陶器の蒸し皿をセットして饅頭をふかして朝餉に出したら早くも眠くて眠くて。金曜に封を切ったイノダコーヒのアラビアの真珠…

まだ最初の外遊(しかも香港まで)

思うところあって、今年は、まんがを読む量を著しく圧縮しようと決めていたのに、昨秋にKindle版を買った『昭和天皇物語』第3巻を読み直してしまった。 昭和天皇物語(3) (ビッグコミックス) 作者: 能條純一,半藤一利,永福一成 出版社/メーカー: 小学館 …

『蟹工船』『二百十日』

年明けは、「ソラリ」というアプリをつかって、小林多喜二『蟹工船』を読み始めた。過去に一度読んでいたが、中学生のときだったので、ほとんど記憶にない。雑夫の少年を漁夫の成年の男が漬物樽を積んである狭い空間に連れ込んで襲う、というシーンのみが数…