読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ぴょん記

まじめにはたらく

ハンドクラフトの値段

 手編みの、五本指の毛糸の手袋。純毛で、おそらくオリジナルのデザインで細かな模様が入っていて、指の部分の色も全部ちがう。編目も揃っていて丁寧な「仕事」。材料、意匠、技術、そして労働と、いくつかの要素に分割して考えると、作り手の提示する価格の5000円がたとえ10000円だとしても、けっして並外れて高価であるとはいえない。ふだん自分が着る服は、ユニクロの1990円のアクリルセーターが1490円になるときを狙ってネットで注文するようなわたしでも、目の前の編み手さんから直接その手作りの品を買うときには、まさかお安いですねとはいわないにしても、すてきな品がみつかってうれしいです、ぐらいのことは挨拶として口にする。いわゆる蚤の市では買い手が値切るのも楽しみのうち、といわれるが、手作りの作品を商うマーケットでは、どうなのだろう。なんとなく、お勉強して下さいとは言いづらいような気がする。「お勉強」といえば、新幹線の中で読んだ雑誌の中で、東京のある著名な魚屋さんのあるじがお若い頃、名店といわれる料理屋を訪れては自分の魚屋さんという職業を明かして「いちまんえんしかありませんが、勉強させてください。」と頭を下げて食事をしていたのだという。たいていの料理屋さんはこころよく彼を受け容れたので、おかげでその魚屋さんは、自身が市場で扱う魚介が最前線の調理場でどのようにお客の前に出されるまでに手業を施されるのか学ぶことができた。海外の歌劇場のジーンズシートのようなお話である。

f:id:e_pyonpyon21:20170215121735j:plain