一枚の布きれを盗み合うような欠乏をわたしはしらない。だから、都会から母親に連れてこられた9歳の双子の男の子たちが国境の町のそのまた外れの「おばあちゃん」宅で、空腹と不潔さと、暑さと寒さに苦しみながら過ごした6年間の軌跡を息を詰めるようにして頭に描き、ページをめくるしかない。
『悪童日記』では、母親は占領国の将校の女になり、双子にとっては半血の妹を産んだという事実を明らかにした直後、爆撃で妹ごと、死ぬ。そして、父親もまた、国境を越えて亡命しようとして、息子たちの手によって亡くなる。双子のひとりは国境を越え、もうひとりは「おばあちゃんの家」に残る。残ったほうの少年は、乳呑み児を抱えた娘(かれよりは3歳上)を保護し、畑を耕し家畜を飼って、居酒屋でハーモニカを演奏する。そして書き綴られるノート。
いったい「嘘」とはなにか。そして、これらは、「三部作」といってもかまわないものなのか。
週末はアゴタ・クリストフ『悪童日記』三部作を読んで過ごした。
— pyonthebunny (@ae_pyonpyon21_j) 2017年6月25日