しかも雨だに降るので、これは慥かに寒かろうと、家のなかに、それも専ら台所のコンロの前にいたような気がする。10時に在宅勤務者に餅入りぜんざいを出し、12時半に市販のパスタソースを混ぜるだけのスパゲッティ等を食べ、15時半に饅頭をふかして食べ、19時に蒸した芋類と焼いた牛肉と、温め直した飯で夕飯にした。湯茶のたぐいは、そのたび白湯を沸かし直したり、水を足したりして淹れている。
明日は、晴れて今日よりは暖かくなるらしい。
今週のお題「読書の秋」
青空文庫を「ソラリ」というアプリで読むことが多い。先日、横光利一『時間』という昭和6年発表の短編小説を読んだ。冒頭、劇団の団長が巡業の旅先でお金をもって姿をくらましたという事実が、提示される。まず、20人かそこらで宿泊している宿屋の支払ができない。お金を送ってもらった人は、思う人と手を取り合って、いつのまにか出奔している。残ったのは、送金を受け取る宛てのない人ばかり、男8人、女4人で、しかもそのうちひとりの女性は重病を患っている。宿屋は、支払を受けねば承知しないと、土地の壮士を見張りに附け、ろくに食事も出さなくなる。ただ、風呂屋にだけはどうにか出かけられる。そこで、皆で風呂に行くふりをして、夜陰と、それから風雨に乗じて、逃げ出すのだが。問題は、寝付いた女をどうするのかということで。
とても深刻で、人間存在の限界に挑むような主題なのに、途中から筒井康隆のスラップスティックのような趣を呈するのはなぜだろう。絶望的な状況の裡に、筒井の『熊ノ木本線』にも負けない本来的な人間のつよさを感じる作品だ。