ぴょん記

お暑うございます。

ユーモラスで、だけど悲しい

 年末年始に、NHKで、中国の武漢市で「鬼城」と呼ばれる、建築途中であるにもかかわらず、建築業者と連絡がつかなくなった集合住宅を購入してしまった人々のドキュメンタリーを見た。その集合住宅は、内装もできていないし、水道もなく、電気もきていない。電気がないと困るので、近所の住民から違法だけど相場の3倍ぐらいの値段で電気を売ってもらう。もうお金を払ってしまったので、行政になんとかしてと働きかけつつ、内装も水道も電気もないないだらけの集合住宅で暮らし始める。理由は多々あれど、結局は皆、そこに住むしかないからだ。

 それが2020年あたりの中国の地方都市である武漢の実情だった、一方、こちらの小説は、2010年より前の上海市が舞台になっている。有名大学を出た30代になったばかりのカップルが、地方出身でふつうの庶民の息子娘であるために、住宅を取得するために筆舌に尽くしがたい苦難に晒される。もともと中国の不動産は、土地の利用権で期限も70年と区切られているのだが、上海のいい場所にあるマンションは、ふつうの勤め人の100年分の年収ほどの価格がする。よい住居を取得して、田舎の両親に預けている息子を引き取りたいという望みをもつ妻は、自分も副業に精を出すと同時に、金銭に淡泊な夫にさかんに発破をかけて、余計に稼ぐように焚き付ける。

 テレビドラマになって、熱心な視聴者を得たこともあるというこの小説、各場面の繋ぎ方が、ほんとうに上手で、独特の疾走感があった。

 

上海、かたつむりの家

上海、かたつむりの家

  • 作者:六六
  • プレジデント社
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