ぴょん記

きょうからしばらく雨降る日々

『凶悪』を観て

 一日寝たり起きたりしていたせいか、深夜になっても眠らないでいたので、白石和彌監督作品『凶悪』を観た。同作品は、実話に基づくフィクションで、狂言回しは月刊誌の記者。彼自身、痴呆症の母親の世話をほとんど妻に任せているという重い家庭の事情を抱えている。ある日、傷害、殺人、放火など、複数の犯罪を主導したとして死刑の宣告を受け、最高裁に上告中の暴力団幹部から月刊誌の編集部に手紙が届き、余罪を告白したいので、記者を小菅の東京拘置所まで寄越してほしいという。面会にいった記者は、未決死刑囚の曖昧な記憶から取材を重ね、その余罪3件が実際に行われたという確信を得て、記事にしたいと編集長に掛け合うが色よい返事はない。

 それでも、取材を続ける記者。未決死刑囚が、捕らえられずにいまだ塀の外を闊歩する共犯者に法の裁きを受けさせたいという希望をもっていることを記者は聞かされている。そのほかにも、余罪について審理が係属している間は死刑が執行されないことに未決死刑囚が目を付け、そのために自分が利用されていることをも、もちろん記者は知っている。自分たちの欲望の充足のために、簡単に人の命を奪う彼らの行状の数々を明らかにしたあと、記者は、あることを未決死刑囚に告げる。

 浄化されない罪と、浄化される罪との境は、あるのか。いや、そもそも一旦は犯した罪が、改心することによってはじめからなかったことになるものなのか。

 未決死刑囚を演じたのは、ピエール瀧さん。共犯者の土地ブローカーは、リリー・フランキーさん。月刊誌の記者は、山田孝之さん。2013年作品。