ぴょん記

きょうからしばらく雨降る日々

後ろから押すタイプの荷車のわたしは驢馬

 車椅子を押して近隣某所に同居の後期高齢者本人を届け、先方に身柄を預けた上、一旦帰宅して(車椅子もがらがらと移動。)、一定の時間の経過後、空の車椅子を押して本人を受け取りにいくだけの簡単なお仕事、のはずが。

 自宅のすぐそばのエリアはまだよい。そこを離れると、地続きの住宅地なのに、なぜか舗装の状態が思わしくない地帯が始まる。昭和の終わり頃に整備の終わった辺りのようで、よほどひどいところは新規に舗装をやり直しているらしいが、あとは少しずつ小さな修補を年度終わり近くに予算消化とにらみ合わせてちょぼちょぼという感じ(あくまで個人の感想です。)に見える、

 とにかく、モノやヒトとぶつからないように、車両に引っかからないように、車の径の小さな車椅子をひっくり返したりしないように、そろそろと車椅子を押す。90度の角度で通過せざるを得ないコンクリート製の側溝の蓋なども慎重に避ける。2月半ばなのに、移動した時間帯は、気温がもはや20℃に届こうという勢いである。プッシュ式の驢馬は額に汗を掻く。コートやジャケットを着ていないにもかかわらず、じんわりと筋肉が張って緩んで全身で驢馬は年寄りの身体を運ぶ。

 2度目の発進、つまり帰り道では、驢馬は専ら自分のために、いや一応他の家族の分も合わせてご褒美ショートケーキを買った。好きなのを選ばせて、残ったのを自分で取るかたちにしたけれど、他の家族が察して遠慮したのかはたまたただの偶然か、いちばん好きな苺ショートを得て、最後は行儀わるく包みの銀紙に顔を突っ込むようにして、スポンジとクリームをおいしくむさぼった。ばひひん、という心地だった。

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