たぶん掲載誌で何編か読んだことがあると思う。円柱型のケーキを3人で均等に分割するように、ケーキの上面に見立てた円に分割線を引いてください、という問題を出されて、たとえばまず円の中心を通る直径を引き、次にその直径に垂直な半径を書き入れる。円はなるほど3分割されるが、面積の割合は、2:1:1で均等ではない。
これは、問題を出された人がふざけているわけでも、問題の趣旨を理解していないからでもない。作中では、おもに当人の知能の問題に由来する現象であると説明されている。
少年院に収容された少年のうち、そのように知的な問題を抱える少年たちに、社会、特に矯正施設のスタッフがなにができるのか、どのようにして少年たちの人生をよりよいものにできるのかを考える端緒となる作品なのだろうか。
次回、シーズンファイナルを迎える『グッド・ドクター6』というドラマシリーズがある。主人公のマーフィー医師は、サヴァン症候群で、なおかつASDという特性をもつ。サヴァン症候群の結果として、外科の医師としてすぐれた診断能力をもつマーフィー医師だが、ASDのために人とうまく関わることができない。今期のエピソードのひとつに「グッド・ローヤー」という回があり、ある衝動を抑えられずに法廷弁護士としてドロップアウトしそうだった女性がマーフィー医師と自分の共通点について、「わたしは衝動を抑えられないことで人に嫌われます。マーフィー医師も、人と視線を合わせたりしないのでやはり人に嫌われます。でも、彼もわたしも、社会をよくするために人々のために働きたいと願って日々努力を重ねています。それをどうかわかってください」という趣旨のことを語っていた。
この医師や弁護士は、人並み以上の知的能力をもつことで、かろうじて社会のシステム内に自分の居場所を見つけて、それはそれでとても苦しいけれど日々の糧を得ていっている。ところが、「ケーキの切れない非行少年たち」は、少年院での生活を経て社会に復帰したのち、かつて犯罪傾向の強かったことに加え、あるいは訓練の不足によって規律に自分を馴染ませるのが不得手で、仕事が続かなかったり住処を失ったりする。そこに付け込まれて、特殊詐欺の下働きに使われることもあるという。
明日から始まる連続テレビ小説『虎に翼』とまったく関係なくもない市川ジュンさんのまんが、2巻までなのでよかったらごらんください。