ぴょん記

きょうからしばらく雨降る日々

欲と体裁

「貴人の邸宅の門前を通過するときには、下馬下車の上、徒歩にて。」というルールを守らなかった場合、その行列には貴人の従者らによる投石などの攻撃が加えられる、という平安ルール。藤原道長の、源明子腹の息である能信の暴力への関与、とにかくしばしば名前が出てくる花山院のほか、女官女房による暴行など、まさに「なにしてくれとんねん」な王朝時代の諸相が史実から導き出されている。

 位の高い人、そしてその人に仕える者が、ただそこにじっとしているだけでは大事にされないから、つねにその地位と権益を脅かそうとする輩に対しては、実行力をもって、わかりやすくいえば手っ取り早くぼこぼこにして、舐められないように周りを締めていたという、なんとも雅さとはかけ離れたお話。おのれの欲を満たし、その体裁を繕うというのは、権力を手にしたものがとる、とりわけわかりやすい行動なのだろう。

 

 能信については、この小説の作中での印象が強かったので、庶民の妻の強姦に関与していたとの記述には当初目を疑った。この小説自体は、院政期を始めるもととなった後三条帝による荘園整理、その帝を歴史の表舞台に押し出した道長の目立たないほうの息子の人生を綴っている。

 

望みしは何ぞ

望みしは何ぞ