ぴょん記

上古文学、外国語、数学、調理、編みもの、縫いもの、競争法

「この世」の風景

 

ランド(9) (モーニング KC)

ランド(9) (モーニング KC)

 

  一種の壁の内側と、その外側との関係という意味では、『進撃の巨人』とパラレルに論じることが可能かもしれない。ただし、『ランド』の「壁の内側」に当たる「この世」の住民と、それに対する「あの世」の人々との間には、対立関係がない。それどころか、相互にそれぞれの存在を殆ど知らない。

 「この世」では、人は、最も長く生きて50歳だ。50歳で亡くなると、「知命」様として祝って葬られる。そして、作業場で目覚める。その作業場では、運び込まれる航空機などの大型機械を解体する仕事が「知命」様たちに課されるが、やがて彼らは身体を悪くして静かに作業場を去る。作業場のずっと奥のほうには、放射性廃棄物を貯蔵するエリアがある。

 「この世」を含む、ランド株式会社を興した高齢の双子と、「この世」で生まれた十代半ばの双子が、ものがたりの軸となっている。加齢を止めて、命の尽きる日を可能な限り先延ばしできる技術が実用化された外の世界からみれば、重労働に励まざるを得ずときには生贄としてわが子を差し出さなければならない「この世」の仕組みは、いかにも野蛮で不条理だ。その仕組みは、高齢の双子が考えたものではなく、「この世」の者たちが自ずから拵えたものであると双子らは弁明するが、容れものが制度を規定する例をわたしたちは歴史の中に数多く見出すことができるのではなかろうか。

 これも半年に一度のお楽しみ。