たとえば血の匂いは、サバンナにおいては、同情や保護のきっかけになるものではなく、捕食者たちに対して、ここに逃げる能力の衰えた、新鮮な肉の塊がいますよ、と広く知らせるようなものだ。
ある人が、困っていること病んでいることだけでなく、誰かに世話になったことやさしくされたことまで、周囲から隠すようにして生きているのは、「心配を掛けたくなかったから」と包括的にいわれることがよくあるけれどほんとうはそうではなくて、弱みをみせて惨めな立場に自分を置きたくなかったからなのだと、このごろしみじみとわかってきた。それをもっと早く掴んでいたならば、それなりの対処もできたけれど、いまとなっては悔やむことばかりだ。