『天冥の標』のⅡで、ものがたりの舞台は、29世紀の植民星ハーブCから21世紀の地球に変わる。描き下ろしの文庫本で10年ほど前に読んだときは、延々と陰惨な集団検疫と隔離のシーンが続いたように思われたけれども、今回、iPadで読み返したら、そういう場面は、かなり限定的だった。日本の防疫担当者として事態の収束目指して走り回る男女ふたりの若い医師と、数世紀後に太陽系いっぱいに拡散した人類の命運を左右することになる集団の始祖の、いずれも瑞々しい言動。そして、まんまと入り込んだ、偽薬売り。
病気という光線に照らし出された、個人と、社会・国家そして人類全体との関わりについて考えざるをえない。