ぴょん記

食べる、遊ぶ、学ぶ。

池辺葵『プリンセスメゾン』

 NHKで連続ドラマにもなった池辺葵さんの『プリンセス・メゾン』を読んだ。もっとも、わたしは、ドラマのほうは観ていない。「26歳、家を買います」という惹句が、やや痛々しいように感じられたのと、あまり自分の体調もよくない時期で、連続ドラマを観るこころの余裕がなかったからだ。たぶん、そう。

 さて、まんがのほうは、主人公の沼越幸が、居酒屋チェーンを運営する会社の社員として働きながら、誰からの援助もなく、限られた予算のなかで、暫定的にではあれ、終の棲家となるマンションを探すはなしである。幸だけでなく、作中にいろんなかたちで立ち現れては消えていく、おもに女性たちの影が、淡く美しい。ときに他人に傷付けられることはあっても、自分からは攻撃的になりそうにないキャラクターが多く、たまに混ざる個性的すぎる人物との数と量の比率が絶妙である。

 主人公の沼ちゃんこと幸は、表立った自己主張こそ少ないものの、モデルルームの営業社員らの誰もが認める「鉄の心」の持ち主で、切り詰めた生活を送りながら頭金を貯め、一旦は手放した自分の居場所を作るために、週に1回の休みだけでなく、時間をみつけてはモデルルームや中古物件の内覧に足を運ぶ。

 だんだんと回を追うにつれて、家を探すということは家族を思う営みに繋がるのだとしみじみと感じられた。一緒に住まうことだけが家族を大切にすることではない。地球の上に鏤められて(多和田葉子さんの『地球にちりばめられて』を読みたい!)、それぞれの場所で、親や子や、夫や妻や、さまざまな係累の日々の安寧を願う人間が、とても温かい。

 

プリンセスメゾン(6) (ビッグコミックス)

プリンセスメゾン(6) (ビッグコミックス)

 

 

 

プリンセスメゾン(2) (ビッグコミックス)

プリンセスメゾン(2) (ビッグコミックス)