もとは、宮部みゆきさんの原作で、2007年にWOWOWのドラマWで映像化されたものらしい。当時は、なんだかテレビを観ることが少なくて、NHKの大河ドラマで何が流れていたのかさえもあまりよく覚えていない。
それはともかくとして。これが劇場上映作品にカットされたものを観た。16年前の映像なので、西田尚美さんも谷原章介さんも、それからもちろん長塚京三さんもお若い。長塚京三さんについては、石坂浩二さんが小村寿太郎外相を演じた吉村昭さん原作『ポーツマスの旗』で、フランス語の通訳をするお役を演じた映像を懐かしく思い出す。
有名になりたい、巨額の金を労せずして得たいという欲が、人を殺したいという衝動に出会ったとき、どんな陰惨な結果が生じ得るのかという話だ。それを宮部さんは、なぜか当事者たちの「財布」に語らせていて、興味深い。スマートフォン登場のはるか以前、1989年に連作の掲載が開始された作品である。いまなら、財布は持ち主を語る役目をすでに携帯端末に譲ってしまっているのかもしれない。
