ぴょん記

上古文学、外国語、数学、調理、編みもの、縫いもの、競争法

『命みじかし、恋せよ乙女』

 D大学医学部附属病院への何十回目かの定期通院。自宅前から都バスに乗って、ハブになっているあるJR駅の前で別のバスに乗り換え、最後はタクシーさんのお世話になるというのがこのごろ多くみられるわたしの通院パターン。16日は、台風10号の影響を考えて、かなり早めに家を出た。その結果、接続がよすぎて、病院の受付開始時刻までにたくさんの時間が生まれたので、最後のタクシーさんは、自分の足で代替することになった。思えば前回も、しまいのほうはてくてく30分ほど歩いていたのだった。肺機能は低下し、感染しやすくなり、筋力も落ちたので、無茶は禁物とされているけれど、必要に迫られて歩くことで、少なくなった肺活量でもそれなりに移動できる身体でいられるように、筋肉のほうが鍛えられるのかもしれない。詳しいことは、自分の身体のことでもよう知らんけど。X線のほかに、CTも撮影した。

 病院での手続が終わって、調剤薬局で宅配の手配をしたのが13時前。14時ちょうどに始まる回の映画を予約していたので、頃合いの時刻だった。タクシーさんがきたので、そのまま、日本橋まで。

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 半月前にみたヴェム・ヴェンダースも、そういえばドイツの映画監督だったけれど、本作では、もっともニッチな部分から現代ドイツに内在する断絶、それも家族の内側にあるギャップについて切り込んでいる。3人きょうだいの末っ子だったカールは、おとうさんおかあさんにとって、そしてにいさんねえさんにとって、どんな子だったのか、父として夫としてのカールは、元妻や幼い娘にとって、どんな人間なのか。それを薄いフラグメントでもって示しつつ、ものがたりは、現在の大きな喪失と、予め約束された消失の確定へと一気に終盤に向けて突き進む。カールは、そして、壁崩壊(というか建設と対なら破壊というべき。)から30年経ったドイツは、いったいこれからどうしていけばいいものか。日本だってひとごとじゃないぞ。ぼくら、その斜陽の日本で、これからたいして創造も労働もできない穀潰しとして老害扱いされながら、なお数十年生きる予定なんだから。……などと考えたことよ。

 ユウとカールのおとうさんであるルディとの関係とか、ユウがカールのもとにきて、カールが日本に来ることで「再会」した経緯とか、倉橋由美子の作品の影響があるのかないのか定かではないが、ドーリス・デリエ監督が万一未読ならば、いろいろお勧めしたい。特に怪奇掌編とか、翻案された志怪ものとか。この映画は、はたして『HANABI』の後日談といえるのか。

 

天然生活 2019年10月号

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