ぴょん記

大根のおいしい季節ですね。

『鎌倉殿の13人』第25回

 頼朝の大泉洋さんが大学生のときから出演していたという、北海道ローカルのバラエティショーでしばしば出てくる台詞などを散りばめながら、今回は、盛大なお別れ会の回。建久9年、1198年の冬に、稲葉重成が亡妻の菩提を弔うために架けた相模川の橋供養に、頼朝は、参列し、帰途、何らかの原因で落馬して、そのまま意識を失ってしまう。

 その人事不省の頼朝をよそに、次期鎌倉殿を擁する比企と、こともあろうに全成殿を推す北条の綱引きが始まるのが次回第26回なのだろう。全成殿といえば、第25回は、彼が口から出任せに言い散らした禁忌が、悉く頼朝の身近に迫ってきて、それでなくとも頼朝は身体が弱っていたであろうに、追い打ちを掛けるような感じで神経責めで心が蝕まれていく。キャラクタとしては剽げた人物だが、無自覚の殺人者として、すでに何人もの命を奪っているのだ、この御坊は。

 今回、頼家のそばには、比企家の、比企尼、能員と道の夫妻、その娘の「せつ」、「せつ」と頼家の間に生まれたばかりの一幡と、ぐるりと一族がいる。「せつ」とは、一幡を儲けるほどに、親しい。しかし、頼家は、せつを妻、つまり正室に迎えるつもりは毛頭なく、三浦家に身を寄せる「つつじ」という名の賀茂氏の娘を妻にしたいのだという。相談を持ち掛けられた頼朝もそれに賛成するのは、「つつじ」の母親が鎮西八郎為朝の娘であるという点が大きい。のちに、頼家とつつじの間には公暁(「こうぎょう」とこのドラマでは読ませるらしい。)が生まれ、三浦氏が後ろ盾になって、京の名刹への遊学やその後、鶴岡八幡宮別当職就任が実現する*1。劇中では異母兄となっている一幡は、比企氏の一族とともに抹殺されているので、仏門に入るとはいえ公暁が成人するまで命を永らえたのは、ひとえに乳母の一族である三浦氏の力によるものなのであるが、最後まで三浦義村公暁を見捨てなかったのかといえば、そうではないだろう。

 乳母の一族とは、比企尼蛭ヶ小島の頼朝に二十年近くも仕送りを続けたように、預かった若君と浮沈をともにし、場合によっては生母の一族に増す助力を惜しまない。とはいえ、たとえば、曽我兄弟の仇討ちに偽装したクーデターの直後の比企氏のように、若君の存在が自分たちの生存と利益相反を生じたとき、わりとあっさりと損切りをすることもあっただろう。赤ん坊のころからずっと育てているから、若君に、情は移る。でも、ただかわいいから、ただ主筋から託されたから、乳母とその一族は、若君に傅いているわけではないのだ。

 とかいいながら、とりあえずは、つつじを妻にした頼家に対して、子をなした自分を側女としたことを、せつやその父母が咎めないわけもないだろう。それにもかかわらず、そういう面倒な選択をあえてする頼家は、さすがに大河ドラマ平清盛』の義朝のお孫さんですね。演じたのは、玉木宏さんです。

 

 ちかごろKindleで文庫本価格に直っていたので買って読んでみた。とてもよかった。近いうちに、ここにレビューを書きます。

 

*1:僧形の人が神社のトップ。