ぴょん記

きょうからしばらく雨降る日々

『鎌倉殿の13人』第30回

 阿野全成は、日本版ウィキペディアでみると、義経の同母兄で、幼名今若。同母の弟には、ほかに義円(乙若)がいる。新納慎也さん演じる全成は、なんともコミカルで、妻の実衣さんともども権力の中枢近くに身を置きつつも、しかし、僧籍に入った将軍の異母弟と御台所の妹という、わりとふわっとした存在だったのではないか。それなりの所領も与えられていただろうし、妻の実家は北条氏だしということで、食べるには困らない。そして、御台所の信頼も厚いから、頼朝の次男の千幡の乳母夫にも選ばれている。義経や範頼といった頼朝の弟たちが次々と粛清されていく中で、全成が命脈を永らえていたのは、彼自身が野心を外に示さない人物だったからというか、いや、むしろ積極的に表舞台から身を引いていたからだろう。

 今回、全成が捕らえられた直後の北条家家族会議の席で、畠山殿が義時からアイコンタクトを受けて、まず武装を整えます、と手順の説明を始める。畠山殿は、梶原殿を鎌倉から追放するオストラコンに当たっての金棒引きに自薦して見栄えが良すぎるからと棄却された過去がある。三浦の祖父、義明を討った過去がある畠山殿だが、いまでは、その孫である和田義盛三浦義村たちとともに、義時に同心している。畠山重忠を演じる中川大志さんは、『平清盛』で岡田将生さん演じる源頼朝の少年期を演じたことがある。当代の市川染五郎さんが『13人』のきれいな少年代表だとしたら、中川大志さんは、美青年の鑑といわれた人なので、なるべく最終回まで「回想」でも、その画面の端でもいいから出続けてほしいけれども、そういうわけにもいかないのだろう。

 政子さんと実衣さんは仲違いしたままだと、実朝擁立に向けて動きがとれないので、今回、和解できてよかったですね。

 

 永井路子『炎環』所収の『悪禅師』は、全成が主人公ということです。この本は、読んだと思うけど、『悪禅師』の記憶がない。

 そういえば、第30回の終盤で比企能員を足止めした善児の右手にさりげなく抜き身の短刀が光っていたのが剣呑でした。