ぴょん記

食べる、遊ぶ、学ぶ。

『烏に単は似合わない』

 松本清張賞を受賞した小説のコミカライズ作品。お后候補の4人の姫君が集められた後宮の一角で殺人事件が起こり、その謎解きが行われる。物語世界の設定としては、まるで源氏の六条院のように宮殿に住まう各町の女主たちが精一杯妍を競うという一種の常套に従ったものだが、十二単を身に纏った美しい姫たちそれぞれの背景はわりと複雑で、実家の勢威を拡大するために「若宮」の寵を得たいという気持ちばかりではない。そのあたりが、当世風なのだろう。

 わたしが恐ろしいと思ったのは、原作の小説の著者も、また、漫画の作家もおそらくは意図した通りの、ある登場人物の心のなかの圧倒的空虚なのだけど、これは、伊藤計劃『ハーモニー』で感じたのと同じ種類の恐怖だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)

ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)