自宅最寄りの金木犀の群れが夏の終わりに無慚にも刈り込まれてしまったために、九月半ばの初回は、朝の風の流れの中にかすかに芳香を感じたのみだった。昨日の役所行きで、とても豪華なかおりの塊に触れて、こんどは皆と同じようにと、専らそれを嬉しく思った。
さて、宅の者は、旅行予約サイト「じゃらん」でいえば、ハイクラスがつくかつかないかという具合の宿にしばしば泊まる。家族はともかく、わたし自身の人間の出来は、ミドルクラスかどうかも危ういものだが、夜間もある程度人手が割り振られていて、万一の火災や地震の際などに安心でありそうなところを選ぶのは、病気で足弱なせいである。とはいえ、この疫病禍において、「ハイクラス」といえども、スタッフの安全のために、ご連泊の場合、毎日のお掃除はいたしません、毎日いたしますのはごみの回収とタオルの交換のみでございます、と断るところがある、というか、もうそれが「ハイクラス」のしたのほうのホテルでもニュースタンダードであるようだ。帝国ホテルさんとかは、しらない。
ゆうべは、そういうミドルクラスの、いいかたによっては瀟洒な宿ではなく、欧米でいうところのグランドホテルに泊まった夢をみた。客室もそれなりに広かったのだが、降りたつ階ごとに、ミニコンサートや、小さなダンスパーティー、ケーキ製作の実演販売などやっていて、途中からどんどんホテルから「わたしの理想のデパート」に夢の内容がシフトしていくのも勝手なものである。なにしろ欧米のグランドホテルに宿泊した経験が殆どないものだから。そこで、パンや、みかんや、ジュースをいっぱい買って、おいしく食べたのは、2年前のいよてつ髙島屋を思い出したものか。
海鮮丼と刺身定食、どちらか選べといわれたら、わたしは、なんとなく刺身定食。