ぴょん記

きょうからしばらく雨降る日々

トマトの苗を注文する春の日永

 水洗いしたトマトを小さい皿の上に置き、2つか4つかに切って、蔕を取る。それに食塩をごく少なく振ってがぶりと食べるのが、このごろの一番の贅沢である。これは、植物のかたちをとった化石燃料のなれの果てと脳で呟きながら咀嚼する。春先のトマトは、1個130円とか120円とかするのだ。とくにわたしがときどきかぶりつく生協のトマトの大きめのやつは、ゆうに1個200円くらいする。それを午後に、夜中に、明け方に、ひとりで貪るわけだけど、まあ、ビール1缶より安い。

 そのビールは、去年の年末に届いた12本4000円くらいのよなよなエールの会社の詰め合わせが、一向に減らない。まだ10本くらいある。アルコールをほぼ嗜まない身体になった最大の理由は病気だろうが、発病に先立つこと5年ほど前からは『あ、酔っている』と自覚するほど酔酒すると翌朝がきつくなってきたので、だんだんとビールに手が伸びなくなったのもたしかである。長い入院を何度か済ませてからは、トマトや果物が口から入る快楽の種になった。

 そのトマト、今年は少し手元でも栽培することにして、タキイ種苗さんに注文しておいた。5月の末に届く予定だが、COVID-19で自宅で菜園をいとなむ人が増えたので、つねにも増して早めに苗を確保しておかねばならない。いつも田舎のほうに送る苗は、プチトマトとミディトマトの3種6本のものだけど、手元で栽培するぶんは思い切ってやや大玉のものにした。あれば幾らでも食べるから、スーパーや生協宅配で買うほかにもたくさんあればあるだけ嬉しいのだ。このように、取らぬ狸の皮算用をしている。