ぴょん記

きょうからしばらく雨降る日々

『鎌倉殿の13人』第31回

 思えば頼家は、孤独な人である。乳母夫の比企では大切に養育されたけれど、道はともかく、能員にとっては源氏嫡流の血を引く、有り難くも離しがたい持ち駒である。誰よりも、頼朝の跡を継ぐのにふさわしい血筋、順位の若君だからこそ、押し戴かれて囲い込まれた。頼家が人事不省となると、能員が考えるのは、頼家の長子であり、かつ、わが孫君である一幡ぎみが無事三代目の鎌倉殿になることである。

 頼家は、実母の政子やその実家の北条氏には、かなり前から見放されている。北条氏がどんなに頼家を盛り立てたとしても、所詮は、乳母夫の比企、側室の実家の比企、子の一幡ぎみをも擁する比企の利益に帰するのだと、白けた眼をして頼家の一挙手一投足を眺める北条氏の面々。その中にあって、夫の全成を喪った実衣は、千幡、のちの実朝の乳母として阿波局の名を得る。皆、『頼家と一幡がいなくなっても、こちらには千幡がいる。』と考えているし、牧の方のりくは、また別のことも考えている。

 養家にも実家にも見放されて昏々と眠り続けている間に、八田殿は「今度は松も混ぜる」と弔いの準備を密かに進め、そして、養家は実家に攻め滅ぼされる。三浦の老当主を殺めたことで和田義盛に何かと絡まれていた畠山殿が、和田を督励して比企の屋敷へ突入する。頼朝が考えた鎌倉府のレジュームが、義時の手を経て完成される。そのひとつの過程に、北条にまつろわぬ比企の殲滅があったということだろうが、幼子殺しは、いかにも惨いね。