ぴょん記

きょうからしばらく雨降る日々

裏のジョンのうちの新しい家族、しろ子

 ほぼ3年ぶりのこんにちは、や。去年の春に、理学部数学科を卒業して、ぼくは、母校の数学科教諭として働き始めました。あいかわらず、1限目はほとんど眠ってるし、給食のプリンは2個以上貰うし、で、せやけど、担任としての家庭訪問も文化祭実行委員会の顧問のお役も、きちっとこなしました。自己申告やけど。

 そんな感じで1年間を無事勤め上げたあと、辞令が出たので、まちぃと勉強するために、学生に戻ることに。大学で同級やった吉田くんが、ちょうどうちに下宿することになったので、院生の吉田くんに、毎朝、チャリコで大学まで連れて行ってもらえることになりました。これまで一年間は、中学の用務員補佐のアルバイトをしていた山田が家業の豆腐屋の配達のあと、家から学校まで連れて行ってくれたの。ほんま、ぼく、友達に恵まれてる。山田は、家業とアルバイトのあと、大学に顔出して、授業に出ているというから、体力底なしや。えらいなあ。

 大学での指導教員と打ち合わせしたテキストの下読みをしたあと、ああおかあちゃん菜っ葉ちょうだいと台所に降りていったら、縁側にだれかいてはる。いや、正確には、いてはる気配がする。よくよくみると、白地に黒い水玉のワンピース着た、日本白色種が日向ぼっこしながら、DIYに励むおとうちゃんの背中をみるともなしにみている。あれ、どなたさん?うちにウサギは、ぼく一羽だけのはず。ぼくが固まったのを見て、おかあちゃんがいう。

「ほら、サトーさんとこの、お子やで。」

「え。サトーさんとこのお子は、犬のジョンだったはずや。」

「そりゃ、うちかて、あんたやネコちゃんやアツミちゃん、ヌーちゃんとかいろいろいてるやろ。サトーさんとこに、ジョンちゃんより他のお子がおってもええよねえ。」

「ええけど、それは、もちろんええのやけど。」

 春の陽はうららかで、河津桜がほぼ満開。日本白色種は、でっかい耳を心持ち垂れ気味にしながら、あくびをひとつして、縁側から庭にぴょんと降りた。つっかけは、ビルケンシュトック。サトーさんのうちのおばちゃんのつっかけや。ウサギは、おとうちゃんと何やら二言三言話して、それから、台所のおかあちゃんに向かって挨拶した。

「ほな、おじゃましましたぁ。」

「あら、お帰りなん。あら、あら。」

 サトーさんとことうっとこは、庭伝いに行き来できる。おかあちゃんが縁側へ行くので、つられてぼくも顔を出してしまった。好奇心はウサギを、なんとやらや。

「あのな、これ、うちの子で、玻璃くん。」

「ああ、中学の先生してはる、玻璃先生。」

「こんにちはぁ。ええと。」

 ぼくは、一応、そのジャパニーズ・ホワイトの名前を聞いとこかと思った。それにしても、同族から「先生」付けで呼ばれると、なにやらこそばゆいね。

「しろ子です。よろしゅうおたの申します。」

 白兎やから、「しろ子」。なにやら幸薄そうな感じやないの。

「うん、こちらこそよろしゅうなあ、しろ子さん。」

 そういえば、しゃべるウサギに会うたの、去年の祇園祭にWちゃんがイギリスから来て以来やと気づいたのは、夜になってからやった。

 ぼくの近々の日記、きょうのところはこんなとこ。