ぴょん記

きょうからしばらく雨降る日々

葱、置いてきてしまって

 木曜は、交通量の多い幹線道路の脇を自転車で往復して、野菜などを買うために大きめの店舗にいった。肉と魚、豆腐や乳製品は、週1回の生協さんの宅配でなんとかなるけれども、野菜は、「スタンダードコース」という何が届くか直前まで分からない、いわば「野菜ガチャ」頼りなので、金曜の配達を前に在庫がほぼ尽きてしまう事態が発生する。たぶん、1日3食をフルで人数分作るためには、「スタンダードコース」をダブルで取るしかないのだろう。ガチャが2倍、それは、けっこう危険すぎる。

 葉物の野菜は、近在の農家さんが前日か当日、お店に届けてくれたものが並んだ棚から選ぶことが多い。この大きな水瓶を抱えているかのような都市の、食欲旺盛な胃袋を支える地味の豊かな農業地が、自宅のベランダからも遙かに望める。葱も菜っ葉もなんでもおいしい。迷わず、生産者さんのフルネームが入った地場野菜を選んで、カゴに入れて会計を済ませた、が。

 家に帰って買ってきたものの仕分けをしたところ、その立派な葱が、どこにもない。自転車で帰る道すがら、どこかに、ぽんと落としてきたのかと思うと、葱がかわいそうになる。昼食後、意を決して、店舗に電話を掛けてみた。じつは、水曜日も、思わぬ場所に電話を掛ける仕儀となっていたのであるが、今回は、純然たる自分のポカによるものである。はずかしいものである。つかぬことを伺いますが、葱の忘れ物はありませんかと、それでも厚顔無恥に問う程度には、わたしも年古りた狸である。

「ええ、ございましたよ。」

 葱の袋に生産者さんのフルネームが入っていたために、すぐに話は通じた。どうして店に置いて帰ることになったかについても、それならしかたがないという感じだった。午後、同じ方面に出掛ける用事があった家族がレシート持参で無事に回収してくれて、葱の青いところが、まず親子丼のたまごにとじられて、うまいのううまいのう。

オーガニックなのにケミカルなキャンディっぽいかおり