ぴょん記

きょうからしばらく雨降る日々

きょうは通院付添の日

 旧盆明けなら暑さも幾分和らごうかと設定しておいた、わたしと同居する後期高齢者のイレギュラーな通院日。いや、まだ十分、暑い。その「本人」の主病は、慢性的な内科の疾患で、そこから派生する症状の解消のために、主治医の先生がほかの科の先生に院内紹介という手続をとってくださる。きょうは、循環器内科の中でも血管内の巡りに特化した検査と治療を行う外来に紹介されて掛かってきた。

 最初に採血があったので、本人が採血室の中に入って15分くらい経ったころ、そろそろ出てくるかなと採血室を外から見てみたら、本人の影もかたちもない。たぶん採血が終わって、そのまま心電図とか各部エコーとかの検査に誘導されたのだろうなとわたしも半分素人の患者だから頭では理解できるけれども、姿が見えないとそわそわしてしまう。事務の人に聞いても、捗々しい回答は得られず、待合室の椅子に座って、『エセー』を読み続けていた。初老のおじさんが、若いころ、熱烈な接吻を交わしたあと、自分の髭にその名残が終日とどまっていたことなど、うちの兼好ならたぶん一万年生きても書かないだろうことを筆のすさびに書き残している。そのくだりを読んで、かなり憮然とした。

 採血室のドアの向こうに消えてから1時間半ぐらいが経ったころ、本人が、看護師さんに送られて、やっとわたしの目の前に戻ってきた。「いろいろ検査されて、ぐりぐり押しつけられて、難渋した。」という。「ぐりぐり」とは、たぶん音波を発する検査機器によるものだろうが、深追いはしない。成人後のわたしより、5センチは背が高くて、力持ちで、駄目といったら駄目で聞かなかった頑丈な巳年生まれは、人が老耄の域に達してのち分け入るという叢の方角へはいまだ向かっていないが、そもそもが独特の皮膚感覚の下で生きているので、「ぐりぐり押しつけられて」というフレーズが意味するシチュエーションを想起する気まずさというものからまったく自由なのだ。

 その後、検査結果と所見を伺って、ついでに他科もひとつ受診して、通院付添の業務は終了した。8時過ぎに家を出たというのに、病院の玄関を出た時点でほぼ正午になっていた。なんだかとてもお腹がすいたので、帰宅途中の「すき家」さんで、牛丼や変わり牛丼、サラダに焼き鮭などをたくさん買った。焼き鮭は、出前館経由で注文すると鯖と同じく330円だけど、お店のテイクアウトでは280円。けっこう大きめの鮭で、朝に炊いたごはんで焼き鮭を食べ始めた「本人」が、けっきょくそのごはんを軽くお代わりすることになった。いろいろとふだん経験しない検査を受けたので、きっと疲れたしお腹もすいたことだろう。

 わたしも、並の牛丼をぺろりと平らげた。

これは、カレーライス。