わたしは、北国のきびしく永い冬というものをしらないので、それが僅かな兆しを覗かせた途端、なにかが弾けるような勢いで芽吹き花開き勢いを得て広がるという北方の春についてもまた、ほんとうの意味で理解していない。うまれてこのかた、じわじわと爪先にほのかな明かりの宿るように、いわば足し算で二月の中旬から四月の上旬にかけて増していく、穏やかな春に馴染んできた。
だからかもしれない。急激な変化となるかもしれないものには心の準備をするのに手間がかかる。今般のCOVID-19に関する緊急事態宣言が39の県で解除されてはじめての日、人の動きの繁くなるにつれて、ウイルスがいかばかり動きやすくなるかを思うだに恐れる気持ちが深くなる。経済が、身近にいえば、働く人の労働の対価を得る仕組みが、かなり苦しい状態になっているとわかっていても、やはり感染症は怖い。
きょうは、櫛形に切ったじゃがいもと、衣を付けるところまで済ませてくれている市販の鮭フライを揚げて、虫養いにした。宵の口に、冷や麦や野菜類だけさっさと食べていたので。
全10巻のうち、最初の2巻が無料でダウンロードできた。山岸徳平先生校注の岩波文庫が手元で唸っていたから、呼ばれたのだろうか。
読みものとして勧めるとしたら、田辺聖子さんのがいちばん。