ぴょん記

きょうからしばらく雨降る日々

野菜をもって転入者を訪問すること

 大河ドラマの中で、四郎時政が、源三位頼政のところに芋をもっていき、また、新しくやってきた目代山木兼隆への挨拶にと穫れたての夏野菜を進上しようとしたというエピソードがあった。頼政は、その芋に当初素っ気なかったが、後日旨かったからもっと仕れといい、目代後見の堤氏は足蹴にして割った野菜を時政の頬になすりつけた。第3回で野菜を粗末にして息子の前で父たる時政に恥を搔かせたからこそ、第4回において、息子である義時が「堤も討ちましょう!」と提案してそのプランが採用されたあと、時政が大きく頷き『よう申した』と義時にアイコンタクトを送るシーンが成立する。第2回だったか、堤氏の家人が義時を泥の中に跪かせてむりやり堤氏へ礼を取らせた話は、おそらく義時は、父や兄にはしていない。平家の威光を背に受けて、目代や権守、その家人どもが小豪族の家族や領民にはたらく無体は、枚挙にいとまがないのであって、小競り合いを避け、かなりの堪忍を重ねての日常がそこにあるのだろう。

 さて、魚や鳥獣ならば、漁や猟に出て手に入れることができる。しかし、農作物は、市で手に入れるか自分で育てるか、あるいは人に貰うかしなければ得られない。だから、昭和の中頃になっても、商店のないような田舎では、そこに引っ越してきたばかりの家族は、まずおかずになるような野菜を手に入れるのに苦労したようだ。ゆうべ、ふと、実家方面の者が、わたしの祖母、会ったこともない早くになくなった祖母が、バス会社の社宅を兼ねたバスの営業所へ引っ越してきた運転手さんの家族のために、新しい所帯がやってくると真っ先に、自分もそれほどゆたかでなかったというのに、季節の野菜一揃いを抱えて届けていたという話をしてくれた。……祖母のうちは農家でもなかったのに。バスの運転手さんの家族が、慣れない土地でさっそく食べるものに困ったら気の毒だというこころからしたことだろう。

 だから、都からやってきた山木氏に新鮮な野菜をもっていった時政は、たしかに息子たちからみれば「やめといたほうがいい」行いをまたやったのかもしれないけど、武士だけど農業経営者の側面があって、なんだかいいよね。

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小豆、ペンギン、小豆とペンギン。

 うつわは、工藤ちえ奈さんのお作。