ぴょん記

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『麒麟がくる』第40回

 信長の命を受けた佐久間信盛らに攻められた吉田鋼太郎演じる松永久秀が、信貴山城で自刃した回である。『麒麟』では、天王寺の陣を抜け出した久秀が下京の伊呂波太夫の小屋にて、天下垂涎の名物である平蜘蛛を「わしが死んだら十兵衛のもの、わしが生き延びたら元通りわしのもの」という条件で伊呂波に預ける約束を伊呂波や十兵衛と交わしていった。十兵衛にしてみれば、久秀は、まだおのれが何者でもなかった時代から鉄砲のことひとつとってみてもあれこれ道芝してくれた先達である。そして、人生五十年時代のこのころにあっては、数少ないシニア武将仲間でもある。なによりスタイルが自分と同じでないにしても華麗で好ましい人物なので、とにかく死なせたくはなかったのである。

 だが、久秀は死んでしまった。

 いまや十兵衛の主である信長は、安土城の大広間にて、信貴山城から引き上げさせた油と炎で損なわれた茶道具の骸のなかに、かの平蜘蛛がないことを嘆き、それについてなにか知らないかと十兵衛に問う。十兵衛は、伊呂波の小屋で交わした約束をもちろん覚えていた。覚えてはいたが、平蜘蛛を信長に得させるのをためらう気持ちから不知を装う。

 京に戻った十兵衛のもとに、平蜘蛛を携えた伊呂波が訪れる。平蜘蛛を自分に残した久秀の目論見を、信長と自分とを離間させる罠と看破した十兵衛だったが、すでに信長は十兵衛の嘘に感づいていた。