雪といえば、2014年のソチ冬季五輪のあたりに、かなりの量が積もって、多くの人が難渋していた。わたしはそれを退院できない病院の中で聞いた。思えば、その前年の2020年夏季五輪東京開催決定も、同じ病院の別のベッドに寝ていて知らされたのだった。あのときは、わたしの疾病が、隣県の医療資源をわしわしと食べ潰した。いまは、病態はやや落ち着いて、居住地である都の医療資源を穏やかにしかし間断なく食らい続けている。ともかく、わたしの発病とCOVID-19が重ならなくてよかった。
病院というハコとベッドがあっても、それを動かす医療者、サポートに回る人々、大量に使用される医薬品を含む資材がなければ、病気や怪我の治療はできない。いま、げんに医療資源の逼迫が、盛んに報じられている状態で、大きな事故や大災害が起こったとしたら、そこで行われるトリアージは、よりシビアなものになるだろう。自分がその場で振り分けられる側にいて、諦められるグループに分類されたとき、従容としてそれを肯えるか、こんなに身体が衰えたあとになっても、まったく自信がない。
映画化された作品。映画のなかで、「報道のヘリは飛んでいるのに、ドクターヘリは飛ばないの!」と、竹内結子さんは、叫んだ。