ぴょん記

きょうからしばらく雨降る日々

姫野カオルコ『リアル・シンデレラ』

 1950年生まれの倉島泉(くらしま・せん)という女性の半生を、肉親を含めた彼女を知る人々に何度もインタビューしていく方法で描写しましたという体裁の文学作品。同じようなスタイルは、有吉佐和子『悪女について』という、亡くなった著名な女性について数十人が語る小説がある。この『リアル・シンデレラ』の主人公は、彼女と比べれば、なんとも善良で、堅実で、いうなれば地味な印象だ。

 泉には、一つ下の美しい妹がいる。どのくらい美しいかというと、少女の頃に、居住している諏訪という町を越えて、その周辺にも麗しいとの噂が轟き渡ったようなレベル。妹と比較するとちっとも美しくないとされる姉の泉は、それでも旧家の女主人に見込まれて、一時はその家の跡取り息子の嫁に望まれたりもする。それは、幼い頃からの彼女の自己陶冶の積み重ねがもたらした結果でもあるのだが、泉は、努力を怠ることなく、孜々として実家の旅館のお客さんたちに尽くす。

 人と自分を比べて、悲しい気分になったとき、読んでみてください。

リアル・シンデレラ (光文社文庫)

 

甘夏は、4ヶ月後かな。

 家の中では、まだノースリーブでうろうろしているのに、120日後には、早春の味覚ですか。