ぴょん記

きょうからしばらく雨降る日々

茶々と家康

 大和和紀『イシュタルの娘』という長編漫画がある。『あさきゆめみし』の大和和紀さんが、比較的最近になって精力的に執筆された小野於通を主人公にしたフィクションで、作中では、文人於通の秘密の配偶者は近衛信伊、三藐院とされている。

 信伊は、高位の貴族でありつつ、いや、帝の妃の実兄という立場であったからこそ、秀吉や家康と絶えず緊張関係に身を置いていたので、その妻である於通だって、自分のお得意でもある家康に百パーセント、心を許すわけにはいかない。ときには情報をとって信伊のために働いたり、義兄弟と慕う真田信繁に物心ともに並々ならぬ援助をしたりする。

 ある日、於通は、家康から意外なことをきく。すでに寿命を悟った太閤秀吉が家康を呼んで茶々と秀頼の行く末を頼む。わかっておりますともと家康はいうが、いやいや茶々をそなたの妻なり妾なりとして立場を安定させ、秀頼をもそなたの実の息子のひとりとして養育してほしいのだと太閤は家康に頼み込んだというのだ。太閤の没後、かつてこういうお申し出がございましてな、と家康は茶々に一応求婚してみたが、もちろん茶々としては剣もほろろのご対応で、いったいなんていうことを言い出す爺様だろうと斥けられた、という話だった。

 聡明な於通としては、それが家康の作話とは思えず、潔癖すぎる盟友の茶々がまたひとつ自身の退き口を潰してしまったように感じられたのではなかろうか。

 

 『どうする家康』の最終回前の第47回は、なんとなく茶々と家康の長い因縁の回収が行われたドラマでしたね。