ぴょん記

きょうからしばらく雨降る日々

なにか事情があるのだろうか

 成人の話し声は、男女ともに300Hz程度だが、公園や保育園の園庭などで遊ぶこどもの声は、ときに2000Hzに及ぶことがあるらしい。

 わたしの居室の窓は、やや広い中庭に面して切られているので、雨の降っていない日中には、そこで小学生以下のこどもらが遊んでいることもままある。それはそれとして、朝の7時半から夕方の6時ごろまで同じ女児の「キャーッ」という叫び声が断続的に聞こえることがときおりある。

 「同じ女児」と書いたのには理由がある。その子以外は、中庭で遊んでいるのは、なぜかたいてい男の子なのである。女児は、見かけではだいたい5歳程度、学齢には達していないように見えるが、単に小柄なだけかもしれない。遊具もあまりない中庭をぐるぐる走り回って、キャーッと叫ぶ。すごく寒い日でも薄着でかなりの長時間、戸外にいる。お手洗いや給水、食事で家に戻ることもあるだろうが、誰に見守られているとか誰かと遊ぶとかでなくて、とにかくひとりで中庭を周回している。

 わたしは、草深い田舎で育って、同じ年輩のこどもというものをきょうだいのほかにはほとんど見たことがないまま、幼稚園の同級生120人の中に入った。朋輩をもつことなく育ったこどもがはじめて加わる集団に対して、好奇心のほかにもつものがあれば、それは紛れもなく恐怖である。

 そんなことを2000Hzの「キャーッ」を連発する女児を見ながら考えていた。すると、やや年嵩の少年がやってきて、女児の手を引いて遠くの棟の自宅へ連れて帰るふうであったので、そこはひとつ安心した。おにいちゃんがいたのである。