大高源五が濱田岳で、例によって右往左往する役。うまい下手を論じる以前に、この人はこういう実存としてフィルムのなかに残されることが決められているのだ。
最初に断っておかれたように、作中では、蕎麦1杯16文を現在の480円として、1文=30円で換算したため、京都から江戸までの1人当たりの旅費が36万円と示されたように、やや割高な感じもした。金のつかいかたを知らない侍は、なにをやらせてもでくのぼうだ、と、幼なじみの勘定方・長助に何度も何度も叱責される大石内蔵助は、みょうにリアリティがある。
江戸の急進派、堀部安兵衛は、本作では、荒川良々。討ち入りしないんだとがっかりする江戸の町人らの冷たい視線を浴びて、いかにも肩身の狭そうな情けない表情で大道を往くすがたがよかった。
「原作」は、こちら:
わたしたちの世代は、大河ドラマで、堺屋太一『峠の群像』をみているので、討ち入りのあった18世紀初頭、鎖国中にもかかわらず、日本もまた、経済史のうえでは大きな峠を越えたことを示されているけれども。
まあ、情緒的なものよりもお金のほうが、わかりやすいし。